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「あれ、煌さん、どうしました?」
煌がステージの上に上がりきった時にはもう緋色がすべて解決していて、煌の助けは必要なくなった。
緋色が気づいて、何もなかったことのように声をかけてくる。緋色としては他意はなかったろうと思うが、煌のほうは先手を取られたような気がしてなんとなくもやっとした。
しかしそれを顔に出すわけにはいかない。にこやかに笑って。
「僕の相方のピンチを助けに来るのはおかしくはないと思うけど」
「煌さん……」
振り返った彼方は驚いた顔をしているし、聡は聡で煌にまで見られていたことにびびっていた。
「大丈夫ですよ、煌さん。このメンバーで起こったことは僕が責任を持ちますから。煌さんの手を煩わせることはしません」
めちゃめちゃ牽制されたような気分になった。
「そうだね、じゃあ、緋色。僕の大事な相方を頼んだよ」
白王子のきらきら笑顔でそう言った。それは完璧に装っているが、漫画だったらこめかみに怒りマークが浮いているところだろうと内心思っていた。
「了解です」
周りが心なしかざわついている。
『Double Crownの二人は不仲』『煌は彼方にだけ冷たい』というような噂がSAKUプロ内で密かに広まっていた。だから今回のように煌が彼方を助けに出てくるとは誰も思っていなかったのかも知れない。
彼方すら酷く複雑な顔をしている。それを見て煌は気不味い気持ちになったが、顔にはださず華麗にステージを下りて行った。
(何やってんだ、俺)
身体のほうが勝手に動いてしまった。あそこは静観すべきだったと今は冷静に考えられる。
(黙って見てても緋色がなんとかして……)
そう思った途端またもやもやしてきた。
(そうだ……思えばあの時も)
煌が思いだしたのは、彼方と緋色が酷く親しげに話しているのを見た時のことだ。あの時もなんだかもやもやとした。
そして、彼方に対して攻撃的な気持ちが湧いて緋色のことを問いただした。そのもやもやが彼方の涙を見た時むらむらに変わって何故か欲情した。
(それであんなことを……)
煌は再びステージを見上げた。
緋色が後輩思いの優しい男だということは知っている。彼方に対してもそれだけなのかも知れない。
(彼方は知り合いの知り合いで話したのはあの時が初めてだって言っていたけど……本当にそうなのか? 本当は親しい仲なんじゃないのか?)
緋色が彼方と肩を組んで歌っている。それが演出なのはわかっているのに煌のもやもやは増すばかりだった。
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