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 自ユニットのライヴ以外に、ミックスメドレーはだいたい一人二、三曲を受け持っていた。メンバーは入れ替わる。リハーサル一日の流れとして前半にミックス、後半はそれぞれのユニットのライヴがある。  自分の出番のない合間は休憩するなり見学するなり自由だ。 (なんで彼奴、俺のほうに来ねぇんだ)  今は煌も彼方も空き時間だ。ついでに緋色も空き時間らしい。  今まで一緒に演っていたんだ、そのままの流れで一緒に見学しててもおかしくはない。 (なのに、なんで俺はこんなにむかむかしてんだ?)  彼方は当然こっちに来るだろうと思っていた自分に呆れた。しかしそのむかむかももやもやも最後まで晴れることがなかった。  今日はDouble Crownのリハーサルはない。  それぞれの出番が終わった瞬間、誰かが特に緋色が、彼方に話かけるよりも前に捕まえなければと思った。 「彼方帰るぞ」 「あ、はい」  アイドルたちは忙しい。次の仕事が控えてい者は出番が終われば即解散だ。勿論そのまま残って見学して行ってもいい。それは自由だ。  Double Crownはもう今日の仕事はないはずでこんなに急いで帰る必要もない。彼方は焦って帰ろうとする煌を不思議そうに見ていたがそのまま流されていった。  楽屋で着替えリハーサル中は待機していたマネージャーの羽加多に送って貰う。  煌のマンション前に車が停まった。 「お疲れ様でした」  そのまま車内で見送ろうとする彼方の腕を掴んで一緒に下ろした。 「彼方、今日うちに泊めるから」  羽加多に向かって言う。さすがの羽加多も驚いた顔をしていた。 * *  目覚めるとそこは見知らぬ部屋のベッドの上だった。 (あれ……ここ何処だっけ?)  どう見てもワンルームの寮の部屋ではなかった。さすがはSAKUプロで寮はそんなに悪いところではなかった。セキュリティのしっかりとした、ワンルームとはいえ一人で住むには充分の広さだったし、備えつけの家具も完備されていた。  しかしここはその自室とは違う。目に映る家具はどれも高級そうだった。  だんだん頭が覚醒してくると、自分が何も着てないことにも気づく。 (なんで裸?!)  彼方には裸で寝る習慣はまったくなかった。  ごろりと寝返りをうつと隣に誰かが寝ていた。  白い肌、整った顔立ち。長い睫毛。 (麗しい……神様ありがとう)  ほう……っと感嘆の吐息を吐いてからはたっと我に返る。 「じゃなくて! なんで煌さんが!」  思わず声をあげてしまった。 「……なんでって、ここ、俺の家だからだろ」  眠そうに目蓋を開けた煌の顔が間近にある。それに上掛けから出てきた腕も何も着ていないようだった。  ずざざざーっと音がしそうな勢いで上掛けの中を広いベッドの端まで移動する。本当は部屋の隅まで移動したいところだが、自分が裸であるという羞恥でそこが限界だった。

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