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「触んないでくださいよ〜」  彼方の思考を邪魔するように煌が触れてくる。手が前に回っていて腹を撫でている。 (緋色さん……? そう言えば最初のきっかけも緋色さんが関係してるっぽかったよね?) 「もうっ触んないでくださいって!」  手は腹から下降して彼方の萎えきったそれをやんわり握った。ぺしっとその手を叩く。 「いつものつんつんだな。昨日は俺に身を委ねてくれてたのに」  耳朶を溜息が掠める。 「委ねてなんかっ!」  振り返って反論しようとして、キュルル〜と腹が鳴った。 「ああ、腹減ってるよな。なんか作るか」  むくっと起き上がる。 「そういえば昨日……お昼の後何も……」  リハーサルでも動き回った、その後も肉体を使った。若いし代謝もいい。腹が減らないはずはない。  それはさておき。 (うへっ。煌さん、料理するの?)  驚いていると、 「お前はシャワー浴びろ、一応拭いてはやったけど」  なんでもないことのように爆弾発言された。 (拭いた? おれは推しに身体を拭かせたのか〜。いや、もともと煌さんが悪いんだしっ)  内心あわあわした。  気持ちはともかく、身体はシャワーを借りてすっきりした。  脱衣所には清潔なタオルや着替えが置いてあったが、その着替えが問題だった。 「煌さん」  広いLDKにはいい匂いが漂っていた。  テーブルにはパンとサラダとコーヒー。そしてミドルタイプの腰巻きのエプロンをした煌がフライパンから皿にベーコンエッグを移しているところだった。 (ああ〜王子がエプロンして料理を〜しかもあれは白王子でしょ、きらきらしてるぅ〜尊い〜)  くぅ~と額に指を当てて浸っている。 (じゃなくてっ!) 「煌さん!」 「そっち座って」 「あ……ありがとうございます。煌さん料理もできるんですね」 「簡単なもんしかできねぇけどな」 (喋ると黒王子だった! じゃなくて!)  ついつい思考がそれてしまった。 「あの、これ!」  自分の着替えとして置かれていた服を差す。裸で出てくるのもなんだから着てはいるが。 「ふぅん、なかなかいいな。彼シャツって奴?」  にやにや笑って見ている。 「彼シャツじゃないですよ! 彼氏じゃないし! っていうか、なんで下はないんですかっ」  羞恥で怒り気味になってしまったが着替えを用意してくれたのは感謝しなければならない。 「パンツは用意したからいいだろ、新品だし」 「あ、ありがとうございます。じゃなくて! おれの服は何処ですか?」  煌は既にフライパンを置いて反対側のテーブルについていた。 「お前の服は洗濯しておいたからとりあえずそれ着とけよ。それで早く座れ」 「え、洗濯……」  言われるまま椅子に座る。 (王子がおれの服を洗濯〜〜)

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