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「迎え来るのか?」 「ううん、電車で帰る」  ここの最寄り駅からは電車で1時間もかからない、羽加多は煌を迎えに来るだろうが彼方は断りを入れていた。煌とはもう楽屋で別れていた。 (煌さん……もう帰っただろうな)  ほんの数日会わないと思うと淋しく感じる。でもその間に自分の気持ちを考えるには良い時間かも知れない。しかし、とにかく今は疲れていて家に帰ってぐっすり眠りたい気分だった。 「あ、じゃあ。俺んちの車乗ってけよ。駅まで送るよ」 「空斗は家の人が迎えに来てるんだ? いいの?」 「いいっていいって」 「じゃあお言葉に甘えて」  そう言って空斗たちの後をついて行こうと身体の向きを変えた途端。 「お前はこっち!」  後ろから羽交い締めにされた。 「こっ……さ……っうがっ」  ついでに口も塞がれた。 「彼方くん?」  異変に気づいて星乃が振り返ったが彼方は何も言えず手を振るだけだった。星乃もあとから気づいた二人も呆然と手を振り返しているのが見えるばかり。  車の中に放り込まれた。 「お疲れ様〜」と運転席ににこやかな顔の羽加多が座っていて彼方が後部座席で煌にシートベルトをされているのを見届けてから発進させた。 (うへぇ〜なんか怒ってらっしゃいますか? 黒王子様。ってかもう帰ったと思ってたよ) 「ったく、いつまで彼奴らと喋ってんだよ。待っててやってんのに」  と理不尽なことを言われたが、 (待ってるなんて言いましたっけ? 別に一緒に帰るなんてことも言ってないし)  と心の中だけで反論するに留めた。  行き先はもう言ってあるのか羽加多は淀みなく車を運転している。 「あ、羽加多さん。おれ、実家に帰るから何処か駅で降ろしてください」 「そうですか、わかりました」  羽加多は快く承知してくれたのに。 「羽加多、駅には寄らなくていい。そのまま俺のマンションへ行ってくれ」 「へっ」  まさか煌が自分も一緒に自宅に連れて行こうとしていたとは思わなくて、一瞬ぽかんとしてしまう。 (いやいやいや)  煌と一緒となると、否応なしに思い浮かべてしまう。初めて最後までしたあの時以来何度か煌のマンションで流されてしまっている。  「あのぉ、煌さん。おれ疲れてるんで休みたいんですけど」 「じゃあ、俺んちで休めばいい」 (ほんとにっ休ませてくれるんですか〜っっ)  羽加多もいるのでいろいろ口走ることができない。 「じゃあ! 寮でもいいですっ」 「俺んちでいいだろっ」 「煌さぁぁぁん」 「いつまでぶすったれてんだ」  結局黒王子には勝てず煌のマンションに連れて行かれた。  羽加多も何事もなかったように「お疲れ様でした。お休みなさい」と言って去って行った。 「なんか飲むか? それともシャワー浴びる?」  これはいつもの流れになるのかと思い、 「おれ、本当に眠くて」  絶対流されまいと牽制の一言を言った。 「わかったよ。じゃあ寝ちまえ」  

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