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何処も彼処も熱くてどうにかなってしまいそうだった。
これが――初めてのキスだ。
擦り合いをしていた頃も繋がった後も唇へのキスは一度もなかった。
(それが答えなんだと……おれを好きではないという……そう思っていたのに)
彼方が息苦しさを見せたので煌がやっと唇を離した。
「わかったか、俺がお前を好きだってこと」
「え……っと」
初めての唇へのキスは余りに激しくて心臓はばくばくだし頭は混乱している。
(ほんとに、ほんとなの???)
信じる自分とそれでもまだ信じられない自分がぐるぐるしている。
「……そんな……いつから……」
そう言うのがやっとだった。
煌は彼方から手を離してソファーの背にどさっと背中をつけた。力の抜けていた彼方もソファーの背に身を沈める。
「いつからか……」
その問いに煌自身も考えこんでいる仕草を見せるので。
(なに? やっぱ嘘なわけ?)
不安のほうに傾きかける。
「今にして思えば最初からかも?」
(最初から? そんなわけあるか)
特に目立つ容姿でもなければはっと目につく華もない。そんな自分をひと目見ただけで好きになるとかありえない。
「嘘です! じゃあなんでみんなに優しい煌さんがおれだけそんなぞんざいな扱いなんですかっ。おれのことどうでもいいか、嫌いとしか思えなかったですっ」
「それは……」
煌は頭を抱えていた。
(図星? 図星かっ)
がーんっと頭に何か当たったような衝撃が押し寄せる。
「あのさっ」
両手で隠した隙間から少しだけ顔を覗かせている。
「俺、ほんとにっこっちが素だからっ!」
「え?」
「こっちの俺は社長と羽加多しか知らないんだ」
「んん?」
煌が何を言いたいのかよくわからない。
(はぐらかされてるの?)
そんなことを思っているのが全部顔に出てしまっているのか、両手で隠していた顔を現した。むっとした顔が近づいてくる。
「わかってないようだな。お前にはずっとこの態度だったろ」
と言われ、うんうんと頷く。
「だから……?」
しかしその意味はまだわかってない。
「だからっつまりっ最初からお前のことを俺の懐に入れてるってことだよ。お前が特別ってこと! わかったか!」
そこまではっきり言われてやっとわかってきた。
「ほんとに……?」
「俺はさぁ、羽加多にスカウトされてきたんだけど。緋色みたいにすぐにデビューってわけじゃなくて、とりあえず研究生になった。その前に社長と面談があって『きみは顔がとても美しいから誰もが憧れる王子様って感じでいきたいんだよね、だからその素は隠してね。勿論研究生や事務所の人間にもだよ』って言われたんだ」
その時の状況が容易く浮かんでくる。
「うほぉ〜あの社長が言いそうなことですね」
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