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目の前で煌が苦笑いしている。
「まあいいや。彼方の気持ち、よぉぉくわかったし」
(わかって貰えた!)
うんうんと首だけで頷くと目の前の顔が苦笑から妙に妖しげな笑みに変わっている。
(ん?)
「じゃあ、遠慮はしない」
不穏な言葉。
(んん?)
煌の変化に戸惑っていると腕が背中に回されて、唇を奪われた。さっきとは違い最初から激しい。あっという間に唇を割られ熱い舌が滑りこんでくる。縦横無尽に口内を荒らされた。
「んんーっっ」
息苦しくて藻掻く。抱きすくめてくる男の胸をとんとんと弱々しく叩く。唇が離されほっと息を吐くと今度は身体が宙に浮かぶ。姫抱きされていた。
「えっ煌さんやめてくださいっ」
彼方は手足をバタつかせた。
「ばたばたするなよ、落ちるぞ」
そう言われて思わずぎゅっと彼に抱きついてしまった。煌が軽くふふんっと鼻を鳴らす。大事なものを抱えるみたいにぐっと力を込められた。
王子服のめちゃくちゃ似合う細身なのに意外なほどが力がある。背もそんなに高くもない貧弱な身体だがけして軽くはないはずの彼方を抱え大股で歩いている。
隣の寝室に入るとベッドの上にそっと置かれた。
「え……っと」
どぎまぎして煌を見上げる。彼方の目には自分を見下ろしながらルームウェアの上を脱ぐ煌の姿が映った。
(遠慮しないって……ええーっ)
レースのカーテンがあるとはいえ、真っ昼間の陽の光が入りこんでいる室内。楽屋にもレッスン室にも窓はなかった。今までここに来た時も仕事後の夜でこんな昼間の陽の光の中ですることなどなかった。
「ま……待って、ちょっとまってっっ」
ごろんと横を向いて煌を避ける。
「待たない。今朝だってあのまましちゃいたかったのに」
キシッと音を立てて煌がベッドに乗り上がってくる。横を向く彼方の目の前に裸の腕が伸びてきた。
耳元でちゅっという音。それから耳朶を嬲られ耳の中に舌が入りこむ。
「ん……っ」
それだけで甘い吐息と共に力が抜けそうになる。舌は首筋を這った。
「あ……っ」
陽の光の中だという背徳感で余計に煽られような感じがした。
すっかり身体の力が抜けてきたところで仰向けにされた。もう抵抗する気もなくなっていた。
「彼方、好きだ」
その声は真正面から聞こえ、すぐに唇を奪われた。唇を割られ舌を貪られながら、ルームウェアの裾から入りこんでいるきた煌の手に直に肌を弄られる。
甘い吐息や喘ぎを漏らすもすべて煌に唇に遮られる。息苦しくなったところで離された。はぁはぁと荒い呼吸をしている間に煌の手に衣服をすべて剥ぎ取られてしまった。
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