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十二月二十四、二十五日。
『桜ノ森スターズ・オン・ステージ』は例年通り大成功を収め、終了した。
リハーサルではぼろぼろだったユエもなんとか無事乗り切った。
(いや、全然無事じゃないよなー)
「おはーすっ、ソウくん」
「おはよう、ウイ。と、トワ」
「……ぅっす」
年末のアイドルは忙しい。
大仕事の後でもそれぞれ畳み掛けるように仕事が続く。
BLACK ALICEの面々もまた次の仕事のためにSAKUプロの本拠地『桜ノ森スターズビル』、通称SAKUプロビルに集結していた。
ユエを除いてだが。
彼らが今いるのは十三階の個室レッスン場だ。
SAKUプロビルは十階から十三階までがレッスン場になっており、何グループも入れるような広い部屋から一グループで使用する個室まである。個室を使用できるかは、仕事量や売り上げなど人気度に準ずる。
デビューして二年も満たないBLACK ALICEだが、一気に上位に食い込んできた。ちなみに一位は不動のなないろだ。
「おわっトワたんいたんかー。びっくりした!」
ウイはすぐ後ろにいたトワに初めて気づいて、大袈裟に声を上げる。
「……トワたんていうな……」
相変わらずサングラスと帽子で表情がわからない。ウイはへらっと笑った。
「いいじゃん、かわいくて」
それには無視を決め込まれた。
ウイはBLACK ALICEのムードメーカーだ。ほぼ喋らないトワとユエ、大人で静かな物言いをするソウ。その中にいて一番賑やかな存在。彼がいなかったら、恐らく演奏中以外はしーんと静まり返ったグループになっているだろう。しかし、それが素なのかは誰にもわからない。
「ユエちんはどう?」
「丸二日眠り続けて昨日目覚めたけど、今はほぼベッドで休んでるよ」
自分が具合悪そうな顔でソウが答えた。
「やーっぱ、去年より酷いよなー」
「ああ」
三人の頭の中に橙也が浮かんだ。しかし、誰もそれを口にしない。
「三回目のリハの後から、表面上はしゃんとしてたよねー。本番終わって疲れちゃったかな」
声は軽いがさすがに心配そうな表情である。
「俺のせいかな」
静かな物言いはするが沈んでいることは少ないソウが珍しく沈んだ空気を露わにしている。
「どうゆーこと?」
「あの後楽屋で、ミックス外れるかと提案した。しかしユエはそれを承諾しなかった。しかも何故かものすごく必死な様子で。だから、調子悪いところを隠そうとしたのかもしれない」
「ずっと、緊張してたのかな」
「だろうな」
かなりへこんだ様子のソウの肩をぽんぽんと叩く。
「ソウのせいじゃないよ、気にするな」
軽そうな面は鳴りを潜めた。
「それにしても……そうまでしてやろうとする理由って……」
ウイは今日は紫のネイルをした指を顎に当てた。それが考える時の彼の癖らしい。
トントンとドアを叩く音。
一番ドアに近いトワが開ける。
個室では秘密プロジェクトの相談をしていることもあり、急に中に入り込むことはメンバーといえど禁止されている。
現れたのはグレーのスーツに銀縁眼鏡の三十代半ばくらいの男。
「ユエは……やっぱり不在か」
「ハクトさん」
白兎 拓海 。若いが敏腕マネージャーだ。今人気のあるユニットは一度は彼がマネージメントしている。一度に何グループも受け持っていることもあったが、ソウが新ユニットをプロデュースすると聞いてプロジェクトに加わった。今はBLACK ALICE一本だ。
「まあ、もともとわかっていたから、音楽番組の仕事はいれてなかったけど」
特に驚いた様子もなく平然としている。
「カウントダウンライブもユエは外してください」
「そうか……それは、残念だ」
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