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 カウントダウンライブは、サクラ・メディア・ホールディングス傘下のテレビ局サクラ・テレビの年末恒例の音楽番組だ。三十一日午後六時から元旦午前五時までぶっ続けライブを行う。サクラ・メディア・ホールディングス傘下のプロダクションだけでなく、それ以外のプロダクションの人気・話題のアーティストも集結する。  昨年三月三十一日にデビューしたばかりのBLACK ALICEも今年二度目の参加となる。しかし、昨年も体調不良を理由にユエは欠席していた。  バンドのメインボーカルが欠席とはかなり間抜けな感じもするが、それはカウントダウンというお祭り的な番組ではどうとでもなる。他グループやアーティストとのコラボや、なないろでも歌の上手さで定評のあったソウメインの曲を番組限りで披露もしていた。 「……もしかしたら、俺も抜けるかも……」  ユエのことは仕方がないと思っていた。  しかし、ソウのその発言にはその他の全員が「えっ?!」と声をあげた。ほとんど感情を表さないトワでさえ、驚きを隠せない。 「ソウ、それは」  ハクトが厳しい顔をしている。さすがに急に二人も番組を抜ければかなり困ったことになるだろう。ここははっきりさせるべきだと思った。 「いや、もしかしたらじゃなくて、抜ける。理由は今は聞かないでくれ」  意志が固いと知り、ハクトは溜息を()いた。 「わかった。社長には早急に伝えておく。テレビ局にも、ウイとトワだけでコラボなりなんなりできるよう手配しておく」  「ありがとう」  ハクトに向かって深く頭を下げた。  が、本当に困っているのはハクトではないだろう。 「え? ボクとトワたんだけ? や、ムリムリ」  自分の顔の前で片手を振る。 「頑張ってくれ」  左右から両肩をぽんぽんと叩かれた。勿論ソウとハクトだ。その上ソウは、原因のくせに憐れみの目を向けてくる。 「ウイ、歌上手いだろ」  ウイはBLACK ALICEとしてスカウトされる前は別バンドでボーカルとギターをしていた。 「え、え〜トワ〜」  とトワのほうを見ると、ひょろっと背の高い男はしらーとそっぽを向いていた。 * *  十二月三十一日、午前八時。  寝起きの悪いユエがソウに起こされずにダイニングに現れた。  しかも、きちんと身支度も整えている。黒のボディバッグを身に着け、これから出かけようという様子だ。外に出る時は必ず化粧をしている彼が今日は素っぴんだ。  化粧しないとだいぶ幼く見える。そして顔色も悪い。 「実家に行ってくる」  その言葉をソウは予想していた。そして、自分がすべきことはとうに決めていた。 「俺も行く」 「え?」  驚いてまじっと見れば、ソウもいつ出かけてもいいような格好をしている。 「何言ってんの、今日カウントダウンライブあるでしょ」 「俺も不参加。みんなにはもう伝えてある」  ユエが眉間に皺を寄せた。  自分に関することなのに、自分の知らないところでもう既に話が進んでいたことに、不快な気持ちを示した。 「勝手なことを。おれは一人で行くから。今から参加するってのでも平気でしょ」  突っぱねるように言い放つ。  それでもソウは引くわけにはいかなかった。 (今まであまりユエの事情に突っ込むのは駄目だと思っていた……でも、それじゃあ、もうんだ)  三年一緒に過ごした。  彼が何かを抱えて生きているのを感じるのには十分の、月日だ。 (俺はそれを知りたいと思うようになった。知って……ユエを支えたい。そう、メンバーとしてだけでなく、一人の人間として)  その感情がなんなのか、自分でもまだ靄の中にいるようだ。 「そんなふらふらで行けるのか? 俺が車で連れていく」  ぐっとユエの手首を掴んだ。  その力強さにユエは困惑した。 「……わかった」  待っていると案外長く感じる一分後くらいに、諦めたように返事をした。 「よし、とりあえず、それ、飲め」  テーブルの上にはいつも通り、甘い甘いホットミルクが置かれていた。  

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