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* * 『ハクトさんちょっと話あるんですけど、空いてる日あります?』 『明日から三日までは休みだよ』 『じゃあ、明後日の夜とかどうですか?』 『いいよ。そっち行こうか?』 『いえ、ユエのいないところで話したいんです』 『じゃあ――』 * *  墓参りを終え、マンションに帰宅したのは夕方六時くらいだった。  ユエはそのまま自室に引きこもった。  二年の経験からすると、この後彼の体調は少しずつ回復していくはずである。  ソウも一旦仮眠を取り、目覚めた時にはもうすでに九時を回っていた。 「うわっ、ちょっと寝すぎたかな」  起き抜けで頭はボサボサ、シャツの裾がだらしなくパンツから出て、ボタンもいくつか外れている。  到底ファンには見せられない姿だ。  とりあえず風呂に浸かり、ルームウェアを着てダイニングに行く。 「腹減ったな」  と冷蔵庫の中を物色。一応年末年始用に用意した食品が並んでいた。 「ユエはたぶん今日はもう起きてこないな」  ローストビーフを少し切り取り、温野菜を添え、缶チューハイを持ってリビングのソファに座った。缶を開け一口飲むと、ローテーブルの上のリモコンを掴み、テレビのスイッチを入れる。ちょうどサクラテレビにセットされていた。 「あ、トワ」  羽のついたツバ広の帽子を被ったトワの顔が大画面に映った。 「相変わらず仏頂面だな」  ぐびぐびっとチューハイを煽って、くくっと笑う。  サクラテレビでは今生放送でカウントダウンライブが行われている。  ユエに引き続きソウまで抜けたBLACK ALICEはウイとトワだけが参加していた。BLACK ALICEよりも十年先輩の他事務所の人気バンドとのセッションだ。一回切りのリハーサルにはソウも見学に行った。ちょっとのことでは動じない二人だが、さすがに緊張している様子だった。 「おー楽しそー」  画面は切り替わり、相手バンドのギターと背中合わせでギターを弾くウイが映る。あの時緊張していたとは思えないほど楽しそうに見える。  二人ともこの日解禁の新衣装だ。三月三十一日に行われる二周年ライブにも着る。 「やっぱいいな、新衣装。あの時間に帰って来れるなら、途中参加でも良かったよな」  ユエの動向が掴めなかった。下手すれば彼の実家で年越しなんてこともあるのではと思って不参加を告げた。  パクっとローストビーフで温野菜を巻き、口に放り込んだ。 「いや、無理だろー。全然そういう気分になれんわー」  頭を抱える。  身体的よりも精神的に疲れを感じていた。  人前ではいつも落ち着いた大人のソウも、余裕なく一人でぐるぐるとしていることもある。同居しているユエにも見せない姿だが、見せたとしてもユエはさして気にも留めないだろう。 (いったい、誰の墓参りをしているんだろう……)  ここに来て三年、十二月三十一日には墓参りをしていた。恐らくそれ以前にもしていたのだろう。 (あんな苦しい顔をさせる、)  画面の中からはもう既にウイとトワはいなくなっていた。別ユニットの姿は目には映っているが、。 (……それが、ユエを変えた理由なのか……)  初めて見たユエ――が脳裏に浮かんだ。少年は、今のユエとはまったく違っていた。  ユエのことが気になって仕様がなかった。それはもうただのメンバーへの思いから外れているような気が、ソウはしていた。 「あ、もしかしたら、ハクトさんなら」  ハクトはSAKUプロに入社して長い。その前からいるソウは当然彼のことを当時から知っていた。 (あの頃はまだ若手だったけど……ひょっとしたら) 「ハクトさんもサクラテレビにいるはずだな」  テーブルの上のリモコンを掴んでラインを開く。 『お疲れ様です』 『ハクトさんちょっと話あるんですけど、空いてる日あります?』    仕事中だ。返信はすぐになくてもいいと思った。  しかし、一分後には通知音が鳴った。 「はやっ」 『お疲れ〜』 『明日から三日までは休みだよ――』  

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