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「おめでとうございます」
「今年もよろしくお願いします」
明けて二日の晩。
炬燵を挟んで向かい合い、とりあえず新年の挨拶を交わした。日本酒をお猪口で一口ずつ飲んだ。
ハクトは社員用に会社が用意したマンションに住んでいて、ソウは何度も訪れている。BLACK ALICEのメンバーも来たことがあるが、ソウはその比ではない。
ハクトは一時期なないろのマネージャーをしていたこともある。ソウもまだ若くいろいろ悩みながらリーダーをやっていた頃だ。新ユニット結成の相談にも乗って貰っていた。SAKUプロの中で話したくない時には、いつもこの部屋を提供してくれていた。
「で、話したいことって? ユエのこと?」
ソウは二口目を口につけながら、どうやって切り出そうか、どこから話そうかと考えていた。しかし、ハクトがずばりと切り込んできたので、思わずぶっと吹き出してしまう。
「おい、汚いなぁ」
笑いながら言い、近場にあったティッシュ箱を渡した。
「す、すみません」
「こんなとこファンには見せられないよねー」
「見せませんよ!」
そういうハクトもいつもと違う雰囲気だ。きっちりとスーツ着込み髪を整え、銀縁眼鏡がいかにも出来る男という感じだ。しかし今はトレーナーにジーンズ、髪も洗いっぱなしで眼鏡もかけていない。別に伊達というわけではないが、自宅では必要性を感じないのでかけていない。
ソウと同じく、こんな姿は事務所のアイドルたちには見せられない。ソウほどのつき合いの長さと深さがなければ。
だからこそ、ソウも誰にも相談出来ないことをハクトには出来るというものだ。
ソウはふっと息を吐く。
今のことで少し肩の力が抜けたようだ。
「カウントダウンライブにユエが参加出来ないのは、体調のせいだけじゃないんです」
ソウが話しやすいように静かに酒を飲みながら耳を傾けている。
「一緒に暮らし始めた年の大晦日、ユエは何も言わずにいなくなりました。まだ暮らし始めて二か月くらいの頃で、俺と暮らすのが嫌になったか、この世界に戻ってくるのが嫌になったのかと悩みました。でも、夜になって何食わぬ顔で帰ってきて、俺が心配していたとも思ってなかったみたいで。説教したせいか翌年はスマホに『ちょっと出かけてくる』というメッセージだけを残してました。行き先は書いてなくて、俺の心配は変わらずだけど、とりあえず帰ってくるだろうという安心材料にはなったんですが」
ハクトが少し口を歪めて笑ったのはユエらしいと思ったからかもしれない。
ソウは続けた。
「恐らくユエはまた行くのだろうと、俺の独断で前もって不参加にさせてもらいました。俺は――知りたくなったんです。この日、十二月三十一日は何があるかを。だから、俺も――。ハクトさんにはいろいろ手配してもらったし、ウイやトワにも迷惑をかけてしまいました。本当にすみませんでした」
ハクトに向かって頭を下げると、
「いや、事前に言ってもらえて良かったよ。そこはもう気にしなくていい。ウイとトワもけっこう楽しそうだったよ」
と軽く笑った。
「それで?」
「今回は『実家に帰る』と面と向かって言われたので、俺が車を出すと提案しました。しかし、連れて行かれた先は寺で、ユエの目的は過去の二回も墓参りだったらしいと分かりました。墓参りを終えると実家には帰らずそのまま東京に戻ってきた、というわけです」
「墓参りか……十二月三十一日が命日ということか……」
ハクトが自分の中で確認をするように呟いたことに、ソウは黙って頷いた。
「ユエの十二月になってからの不調はそこにあるのかな」
「ユエはずっと黙っていて、お参りする時はまるで早く立ち去りたいみたいに落ち着かなくて、去り際に見た顔はすごく苦しそうでした。手を合わせている時もきっとそんな顔をしていたんだと思う。そんな顔をさせる誰か……ハクトさん、心当たりありませんか?」
じっとハクトの顔を見つめる。
「え? 俺?」
彼は少し驚いたように眉を上げた。
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