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* *  一月五日。  BLACK ALICEは二周年ライブに向けて始動。  しかし、ソウはだいぶ前から頭を悩ませていた。ここがリーダーかつプロデューサーの腕の見せどころで、ファンの期待には応えなければならない。  頭の中では様々な案が浮かび、消えていく。  目玉の一つは決めている。  お約束で行われるアンコールで披露する新曲だ。 「新曲かぁ〜」  しばらくBLACK ALICE専用となる十三階の一番奥のレッスン場でソウは深く息を吐いた。  これもまたどんな曲にするか頭を悩ませているが、大まかには形にしている。  パソコンに打ち込みながら。 「なんか、もうちょい。いつもと違うような……」 「あけおめ〜」  ウイが賑やかに入ってきた。彼一人でしんと静まり返っていた部屋が華やぐ。 「あけおめ」  部屋の隅に休憩、会議用に設置されたテーブルとイス。ウイはそこに座っているソウに近づいた。 「なんか、正月から辛気臭い顔」  上から眺め、頬の肉を摘んで軽く引っ張る。 「正月はもう終わった」 「いや〜十五日までは正月でしょー」  ガハハと綺麗な顔で豪快に笑う。さすがグループのムードメーカーだ。ソウはほっと肩の力が抜けたような気がした。うーんと伸びをして一休みすることにする。 「どうぞ」  とテーブルの上に人数分の缶コーヒーが置かれた。メンバー四人にハクトの分で五本だ。派手でがさつにも見えがちだが、気配りができる男だった。 (そういえば……ウイの素顔って見たことないような気が……初めて会った時は女装でバッチリメイクしてたし……)  無理に関わろうとかそういうことではないのだが、メンバー同士もう少し関わってもいいのでは、とこの間ハクトと話した後に思うようにもなった。 (とりあえず、メンバー全員の素顔を知りたいとか?) 「やだーっそんなに見つめないで、照れちゃう〜」  大袈裟に言って両手で顔を隠す大振りなリアクション。 「オレに惚れちゃダメだよ」  語尾にハートマークがついてそうなトーンで言い、ソウの鼻先をつんつんと触った。  ソウはにこやかに笑う。 「メンバーとしては、惚れてるよ」 「だよねー」 『これは一本取られましたな』みたいな感じで、あははと笑った。 「ソウにはユエがいるもんね」 「え?」  驚いてウイの顔を見返そうとしたら、当の本人はさらーっと言い流した感じで、もう別なところを見ていた。  今BLACK ALICE専用に使用している部屋には楽器がセッティングされている。そっちに顔を向けていた。 「トワと、ユエ……もいなのかな?」 「ユエは一緒に来ていて、今飲み物買いに行ってる。トワはまだだな」 「そっかー」  退廃的かつ耽美なハードロックというのがBLACK ALICEのコンセプトだが、もちろん普段からそういうわけではなく、なんとなく穏やかな空気が二人の間に流れていた。  が、一瞬後に外の騒ぎに掻き消された。  ウイがドアを開けたまま入ってきていたので、静かな廊下に響く声がよく聞こえてくる。 「なんか、廊下騒がしいな」 「だね。ん? ひょっとして、トワ? なんか大声で」  二人は顔を見合わせた。 「珍しいな、トワがあんな大声で」  メンバー(イチ)無表情で無口な男の、演奏時以外で聞いたことのない音量だ。 「今日、他にどこか使ってたか?」  ソウが眉間に微かな皺を寄せて立ち上がる。先にドアの向こうに行ったウイを追った。  長い廊下の中程に自動販売機がある。  騒ぎはその前で起こっていた。  ソウとウイはそこへと小走りに向かって行く。  そこにいるのは、声の主のトワ、トワの後ろにユエ。それから、彼らに背を向けて顔がわからない誰か。 (オレンジの髪。あれは……橙也?)  

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