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* *  一週間が過ぎた。  その間に何回かメンバーが集まり、二周年ライブの構成などを決めつつ練習をしていた。  しかし、あの日の気まずい雰囲気は尾を引いていて、メンバーたちの表情はどこかパッとしない。  いや、無表情だったりぼんやりだったりで、いつもパッとしてもいないのだが、今はそれ以上で空気も重い。  ユエのぼんやりも輪をかけているし、トワは無表情ながらどこかムッとしているようだ。  あまり自分の悩みを外に出さないソウでさえ、何か悩んでいるのがわかる。それはたぶん二周年ライブに関してではないだろう。そして、ユエとの間にどこかぎこちなさが見える。  ウイはそうメンバーたちを観察していた。 (なんなんだ、この雰囲気は……空気重っ)  自分の周りを手で払ってみても、それが消えるはずはなかった。 (ソウとユエはあの後二人で話し合ったのか? それがこの結果? 何か重大な案件がわかれば、話してくれるとは思うんだけど。このぎこちなさは、二人の間に何かあったってことか?)  度々場を盛り上げようとしているウイだが、それも不発に終わっている。  ウイはベースの調整をしているトワに近寄った。 「なに?」  放っておこうと思ったトワも顔をずっと見られていては放ってもおけず、吐き捨てるように言った。 「なんなんだよ、その顔は〜〜」  顔には貼りついたような笑み。漫画だったら額に怒りマークでもついたような感じの顔で、トワの頬をぎゅうっと引っ張った。 「いてっ。何すんだよっ」 「なにいつまでムッとしてるんだよ〜」  といっても一見はいつもと変わらないように見える。トワ自身もそう思っていた。心の中ではむしゃくしゃしていても顔には出てないはずだと。 「ムッとなんかしてねぇよ。いつもと同じだろ」 「同じじゃねぇーわ」 * * (なんでこいつにはわかるんだ)  もともと感情が顔に出ないような性質で、たぶんいつも同じつまらなそうな表情をしているのだろう。  トワはそう自覚していた。子どもの頃からそうだった。学生時代は「なに睨んでるんだ」とか「ケンカ売ってるのか」などとよく絡まれていた。本人はどちらかといえば無気力で自ら関わろうとは思ってもいないのに。  そんな時は面倒なので、少しだけ眉間に皺を寄せて圧をかける。百八十八センチの長身と少しの圧で大抵の人間は捨て台詞を吐いて逃げて行くのだ。 (ほんと、コイツ苦手)    音楽とか楽器とか特に興味はなかった。でも誘われてやってみたら、手放せなくなった。  バンドを組んだりもしたが、似たり寄ったりの性格が集まってすぐに解散、というのを何度か繰り返していた。  そんな時にソウにスカウトされた。  プロとか、しかも男性アイドル専門のプロダクションなんかには興味がなかった。最初は断るつもりで事務所を訪れた。しかしメンバーの中に見知った顔を見つけ、トワは加入することに決めた。  あまりプライベートなことに突っ込んでこないタイプの人間の中は思いの外居心地が良かった。それにずっと『探していた人』にも出会えたのだ、これは続けない手はないと思っている。  ただ一人を除けば。  ウイ――BLACK ALICEの中ではムードメーカー的な存在。本人もプライベートなことはいっさい言わないし、素顔もわからない。  でも彼は人をよく見ている。  へらっとした顔の下でまるで心を読み取るみたいに。 (俺みたいな奴構ってなにが楽しいんだ?)  全員に同じように接触しているように見えるが、自分への接触率が少し高いんじゃないかと思っている。 (いろいろと見透かされているような気がするんだよな)  そう思うと少し居心地の悪い思いがした。  もちろんそれは顔には出していないつもりである。 * *  部屋の一部で小競り合いはあるものの、全体的には部屋は静かであった。  そんな中でドンドンドンと忙しなくノックする音が聞こえてきた。  鍵は中からかけられており、ソウが立ち上がってドアを開けた。  慌てて飛び込んできて、また鍵を閉めたのはマネージャーのハクトだった。

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