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「記事は削除されて、SNSに少し話題が出てる程度ですね」
「そうだな。まぁ、もともとあまり信用されていない雑誌のネット記事だし、SNSで触れてるのもアンチくらいだ。離れたファンがいるかどうかは分らないけど、とりあえず二周年ライブには影響はないようだ」
「行動が早かったお陰ですね。さすが、社長」
という至極真面目な会話をしているソウとハクト。だが、その絵面がどうにもいけない。
今までレッスン場でミーティングをしている時は、大抵ユエはその辺の床に座り込んでいる。それが今はどうだろう。
主にソウのパソコン作業の為に置かれたテーブルとイス。今もそこにソウが座っているのだが、ユエはそのソウにぴとっとくっついているのだ。
ソウの腕に腕を絡ませながら。
ここ数日そんな感じだ。
はじめは驚いた顔をしていたハクトももう見て見ぬふりをしている。ウイはなんだかお腹いっぱいというような微妙な顔をしているし、トワは不機嫌をまったく隠していない。
ソウは視線がちょっと痛いなぁ、と感じながらも気にしていない体 を装い、ユエのすることを黙認していた。
(こんなふうにしたの……俺だよな……)
内心は彼に対しても他のメンバーに対してもなんだか申し訳ないような気持ちになっている。
それはさておき、
「完全に払拭できるような別の話題がほしいよなぁ」
ソウは頭を悩ませながら呟いた。
「じゃあ、さー。アリスでも登場させちゃう?」
軽い口調でウイが言った。口調も軽いが気持ちも軽い。冗談のつもりで言ったのだが、それにソウが興味を持った。
「アリス?」
「え、だって、BLACK ALICEなのに、アリスいないじゃーん。前から何でなんだろうって思ってたんだよね」
「あ、そうだな」
とハクトも同意する。
「普通に考えればボーカルがアリスって感じだよな」
全員の視線がユエにいく。
「でも、ユエはどっちかってーと、やっぱアリスよりはクィーンかな」
ウイの言葉を聞きながらソウはじっとユエの顔を見ていた。それに気づいたユエがソウに向かってにこっと笑った。
「あ……」
その時ソウの脳裏に浮かんだのは、数日前の朝のことだった。
『あの日』のユエの笑顔。
朝日の射し込む白い部屋。
白いベッドに潜り込んでいるユエ。
白い――。
ソウはすくっと立ち上がる。
「あ、ごめん。ちょっと急用できたから、今日は解散」
「え?」
「また、オレらだけになったなー」
ウイとトワはそれぞれの楽器のチューニングをしていた。
ソウが部屋を出る時、もちろんユエもついていった。それを肩を竦めて見送っていたハクトもやっぱり部屋を出た。
残ったのは、ウイとトワ。
「最近、こんなんばっかだなー。大丈夫なのかな、二周年ライブ。まだセトリも決まってないのに」
「大丈夫なんだろ、ソウが何か思いついたみたいだし」
手を止めてぼそっと言う。
「あ、そこは信用してんだね。そんなムッとした顔をしてるのに」
「ほっとけよ。ってか、あんたも帰ればいいだろ」
そんなふうに邪険にされても、ウイはへらっと笑う。
「いいじゃん、いつも取り残される者同士仲良くしよー」
ユエがソウにしていたみたいにぴとっとくっつこうとして、容赦なく払われ、
「しねーよっ」
吐き捨てるような言葉が返ってきた。
しかしそれすらまったく意に介さず、へらへら笑っている。
「ソウとユエ、ぜったい何かあったよね〜。一線越えちゃった感じかな〜?」
自分の言った言葉に首を傾げて。
「うん? でもどっちかっていうと、アレかな。初めて見たものを親だと思ってくっついてるみたいな、アレだね!」
大発見! みたいな顔をしてトワのほうを見ると、めちゃめちゃ怒りを露わにしていた。
「あんた……俺を怒らせたいんだな」
「あはははははは。トワちんめっちゃ怒ってる〜」
何故か大笑いしているウイであった。
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