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『ねぇねぇ、SHIU が最近アップした動画見た?』
『あの白い人なに? ドレスも髪も真っ白』
『あれ曲がぜったいBLACK ALICEだよね』
『BLACK ALICEの新曲?』
『これはひょっとして二周年ライブで新曲発表あり?』
二月も半ばのことである。
桜ノ森スターズのアイドルたちの写真集や
映画のパンフレットなどをよく手がけている、プロカメラマンの『SHIU』があちこちのSNSや動画サイトで謎めいた動画をアップした。
桜ノ森スターズのアイドルたちのファンの間ではSHIUもまた有名で、そこから彼自身の写真や動画のファンも増えていた。
そんな彼の動画がファンの間で話題になった。
初めは白いドレスのアップで正直何を映しているのかわからない感じだが、煌めきや光線の加減が美しい。そして、流れてくる曲がどうやらBLACK ALICEらしいという噂が立った。
動画は数日ごとに新しくアップされ、アングルを変えながら次第に全体像に近づいていく。
三月に入る頃には、それは白いドレスを着た女性で背の半分ほどの長さの髪も真っ白ということが分かった。ドレスにも髪にも宝石が飾られていて、美しく輝いている。
曲には歌詞が相変わらずついていないが、それはファンの間ではすでにBLACK ALICEのものであるという確信に変わっていた。
「なかなかすごい騒ぎになってますなー。さすがシウさん」
感心した様子でウイが言う。
彼らはいつものようにレッスン場に集合している。相変わらず、ユエはソウの傍にぴったりとくっついていたが、もう誰も何も言わない。
「これは二周年ライブ当日零時に、歌付きで一曲まるまる流れることになっている。そして、その白い女性の全体像がやっと明らかになる」
この計画はもうすでにメンバー全員に伝えてあるが、改めて確認する。
「女性……って、ユエじゃーん」
げらげらウイが笑いだす。彼の笑いが収まるのを周りは温 い目で待っていた。
「や、でも。さすが、はソウもだよね」
目尻に溜まった涙を拭きながら、いくらか真面目な顔になる。
「突然何かを思いついて出ていった翌日には、曲も歌詞も持ってきて、シウさんと動画撮影と配信の話を取りつけてきたんだもんな。めっちゃ驚いたよ」
「みんなには忙しい中さらに負担をかけたようで申し訳ない」
ソウは頭を下げ、謝罪の意を示した。
「まぁね。新曲リリースもあるのに、もう一曲とか。ライブの構成練って練習して、リハやって、パンフ撮影したり、間に音楽番組の収録&生出演してライブの宣伝して、めっちゃ忙しいけどなっ。でも、オレらならやり遂げられるっしょ」
ぐっと親指を立てた。それをソウが頼もしそうに見る。
「それにめっちゃ楽しいし。な、トワ」
相変わらず仏頂面のトワに話を振ると、
「うっす」
と無愛想な一言が返ってきた。
「でもなんでこっちはリリースしないんだ? なんだったらこっちを新曲にしても良かったんじゃね?」
「いや、こっちは今後もリリースするつもりはないし、動画も終了後零時にすべて削除する」
「え?」
さすがのトワも驚いたらしく、ウイと声が被った。
「それ聞いてない。もったいなくない?」
「まぁ、ちょっともったいないかな」
ははっとソウが笑う。
「でもまったく演らないってわけじゃないから。ライブとかオン・ステとかカウントダウンライブとか。特別な時に演奏する、『幻の曲』みたいな?」
にやりと少し悪い笑みを浮かべた。
「おーなるほど! なんだそれ、めっちゃ楽しそう。それに、これユエのための曲だもんな! 真実 のユエはそうそう簡単には晒さない、みたいな?」
今まで思っていても誰も口にしなかったのに勢いで全部言ってしまった。
隣に立っていたトワに肘でどつかれる。
「って、なにっ」
なんでどつかれたのか分からずトワのほうを見ようとしたら、顔をやや赤くして気まずげなソウの顔が目に入った。ついでに隣のユエの顔も目に入ったが、こっちはまったく気づいていないようにソウに向かってにこにこ笑っていた。
「あー、とにかく、セトリもやっと決まりましたし! じゃあ、今日も頑張っちゃいましょー!」
「うっす」
とトワが答え、
「そうだな」
と言ってソウが立ち上がった。それに引っ張られてユエも立ち上がる。
廊下の隅で喧嘩をふっかけられたり、突然誰かが部屋を飛び出て解散ということもなく、最近の彼らは二周年ライブに向けて邁進しているのであった。
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