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* *
Alce wo can't smile
Delicate and cold
Beautiful and hard
Now break that shell
笑わないAlce
笑えないAlce
白と煌めきの世界から、次第にカメラが引いていく。白いドレスを纏い、白い長い髪の後ろ姿がだんだんと明らかになる。
流れてくる歌は、『彼女』が歌っているようだ。両手を天に向かって伸ばす。何かを求めるように。
闇に染まったALICE
藻掻き苦しむ手を天に伸ばし
何を求めるのか
その手を掴んで
白く染め上げよう
部屋全体が映し出される。冷たいコンクリートの壁の四角い狭い部屋だ。
歌う『彼女』の顔が露わになる。
背後に黒い服を着た三人の男。それぞれ楽器を携えている。
俺がおまえを救おう
もう笑っていいんだ
誰もおまえを責めない
おまえは自由だ
歌う『彼女』のアップ。
画面にノイズが走り、真っ暗な世界になる。
再び映り出された時には、世界は変わっていた。
広い草原、青い空。
楽器を携えた男たちも皆、白い服に変わっている。
歌う『女性』の顔が次第にアップになり、口元だけになると音楽がぴたっと止む。
そして、口元が笑みの形になり――。
Smile, Alice
Smile, my angel
ブッと画面が消えた。
* *
三月三十一日。
十八時開演のBLACK ALICE『二周年ライブ』の会場内、グッズ売り場。至るところでの一番の話題は本日零時にアップされたSHIUの動画だった。
今まで曲だけが流れていたが、それに歌がついた。
女性のものとも男性のものともつかない不思議なトーン。伸びのある歌声。飲み込まれて、惹きつけられずにはいられない。
ユエの歌声だ。
やっと明らかになった『女性』の顔。
白い肌。ピンク色の唇。
ラインストーンのフェイスシールが、涙のように目の下から連なっていた。
『ねぇ! 見た?!』
『見た、見た!』
『あれって、ユエだよね?』
『最後、笑ってた?』
『あの曲、新曲じゃなかったね』
『新曲は別のだった』
『どういうこと?』
『なんで途中で切れたのー』
『最後まで見たかったー』
『今日、演 るかな?』
そこかしこで似たような会話がなされ、今日のライブへの期待は否応なしに盛り上がっていった。
ライブは最初から疾走していた。
誰もが熱狂し、声を上げ、身体はリズムを取る。
会場中が一体化する。
それがラストの曲まで続く。
二周年ライブの閉幕のMCは、ソウがすべてのファンに感謝の意を伝え、それに続き他メンバーからの言葉もあった。
そこで一旦彼らはステージから姿を消す。
もちろんそれで終わるはずはない。
すぐにアンコールの嵐。
一度目のアンコールは世に出回る一日前に会場で販売された新曲だ。
そして、二度目のアンコール。
舞台の袖から客席を見ているBLACK ALICEのメンバーの衣装は全員が白。
これまではバンド名通りに、黒基調の衣装で通してきた。白は初めてだ。今回の騒動がなければ閃かなかったかもしれない。
ユエの衣装はその中でも群を抜いて美しい。
レースと宝石を散りばめた真っ白なドレスは引き摺るほど裾が長い。白のウィッグに飾ったヘッドドレスも白く、まるでウェディングドレスのようだ。
「おめでとう、ユエ」
「何言ってんの、ウイ」
「いや、なんか、花嫁さんみたいで」
わざとらしく涙ぐんでみせる。
「ばっかじゃねぇの」
トワの辛辣な一言。
「さぁ、行くぞ。みんな、大ラスだ」
ソウの一言で気を引き締める。
「ユエ! 笑え!」
こくんとユエが頷く。
ユエの左右にソウとトワ。それぞれ差し出された手の上にユエの手が重なる。そして、ドレスの裾をウイが持つ。
さながらヴァージンロードを歩く花嫁のように。
そして――今日一番の大歓声が巻き起こった。
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