106 / 115

36

* * 「大成功だ! おめでとう!」 「サイコーの気分」 「イェーイ、盛り上がったね〜!」 「うっす」 「おれ、笑えてた?」  五人がパチンパチンと手を叩き合った。  五人とはBLACK ALICEのメンバー、ソウ・ユエ・ウイ・トワ、そして、マネージャーのハクト。  すべてをやり切り、サクラドームの楽屋で成功の喜びを分かち合っていた。  楽屋は四人別々に与えられていて、今はリーダーのソウの部屋に集まっていた。ソウ、ウイ、トワはまだ最後の白衣装のままだったが、ユエはドレスが暑すぎてソファの上に脱ぎ捨てた。タンクトップに短パンだ。 「ちゃんと笑えてたよ」  とユエの頭を撫でる。 「良かった」  ほっとしてにこっと笑う。 「サイコーの笑顔だったよ〜」   ウイも褒めたが「ありがと」と素っ気なく返された。 「はぁ〜相変わらずですなー、ユエさんは」  大袈裟に溜息を吐く。 「なにそれ、よくわからない」 「大成功おめでとう〜。そして、お疲れ様〜」  そこへ手を叩きながら入ってきた人物がいた。 「シウさん」  カメラマンのSHIUだ。 「シウさん、観に来てくれたんですか?」  わっとシウの周りに皆が集まってくる。 「もちろんだよ〜。オレもめちゃめちゃ熱くなっちゃったよ」 「イェー」  シウともパチンパチンと手を鳴らし合う。 「今回本当にシウさんにはお世話になりました。なんて、お礼を言っていいか」 「いいんだよ、礼なんて。仕事だし。それに、オレもけっこう楽しんだ」 「楽しんだっていえばっ」  と勢い込むウイ。 「最後のアレ! 予定と違うんじゃなかった? ねぇ、ソウ」  誰に対してもまったく敬語が出てこない。 「あ、そうですね。映像の最後ブチ切れてましたね。さすがに俺もびっくりしました」  本来あの映像は最後まで歌い終えて、ユエのアリスが微笑むところまで完成していたのだ。それをアップする段階で切られていた。 「スマホ壊れたかと思った」  ぼそっとユエ。 「や、それはないだろ」  とトワ。 「あ、ごめん。事後承諾だけど、あのほうが面白いし、期待度高まると思って」 「さっすが〜」  そんな軽いノリのウイに、ソウも同意する。 「ほんと、さすがです。あれで期待度だいぶ高まったと思います。それにアレはシウさんのアカウントですから、シウさんが自由にするのは当然だと思います」 「お褒めにあずかり光栄です」  シウは片手を胸に当て、仰々しく礼をした。それからユエを見て。 「ユエ、やっぱ、ステージでの笑顔のほうがサイコーだったよ。近くに行って撮りたいくらいだった」   両手の親指と人差し指で四角を作る。ファインダーのつもりのようだ。 「めちゃ綺麗だった」 「そんな、綺麗だなんて」  珍しくユエが照れる。 「シウさんこそいつも綺麗です」  珍しく人を褒めてるユエに、ウイが「おおーっ」と声を上げた。 「ほんと、カメラマンよりモデルやったほうがいいくらいだよ、とてももうすぐ、よ……」 「ん? 何?」  実はシウはもうすぐ四十路に手が届く。しかし、そうとは思えないほど若々しく美しい。 「や、なんでもないっす。それよりー」  自分がうっかり口を滑らせてしまったことはなかったことにした。 「これからみんなで打ち上げ行っちゃう? シウさんも一緒に!」  ライブや仕事の後、打ち上げ的なものは今まで一度もない。ウイもいつもは言い出さないのだが、さすがに今回は行ってもいいんじゃないかと思っている。  しかし。 「あ、悪い。この後急いでやらなきゃいけないことあるから。また今度誘ってくれ」 「じゃあ」とひらひら手を振ってシウは楽屋を出ていってしまった。  シウが行くと言えば、他のメンバーも断りづらいだろうと踏んでいたウイは、あー、これはきっと誰も行かないと、予想がついた。 「ごめん、ウイ。俺も……」 「ソウが行かないならおれも行かない」 「あ、俺も事務所戻らなきゃ」  予想通りの展開になる。  ちらっとトワのほうを見ると、 「行かねーよ」  冷たい一言が飛んできた。 「ですよねー。あ、じゃあ皆さん! お疲れ様でした! あ、ソウ次の予定決まったら連絡してね〜」  早々(はやばや)諦め、部屋を出て行った。  

ともだちにシェアしよう!