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* * 『………… 『白のアリス』もまたいつか現れる  その日を楽しみにしていてくれ  BLACK ALICE リーダー ソウ』  最後の文字を打って、ソウはスマホを置いた。  メンバーの誰が呟いてもいい、BLACK ALICEのSNSアカウントだ。だが、ライブの締め括りはやはりソウが行なっている。 「シウさんからメール」  その時開いていたパソコンにメールがきていたことに気づいた。 『今日は本当にお疲れ。データ送った。動画は零時に削除した』 『データありがとうございます。シウさんこそお疲れ様です。動画の削除ありがとうございます』  返信をし、パソコンのほうもシャットダウンした。  四月一日零時二十分。  すべての業務終了。  見計らったようにノックの音がする。 「どうぞ」  そう答えると、静かにドアが(ひら)き、枕を持ったユエが入ってきた。  二人が触れ合った日から毎日といって良いほど、どちらかの部屋のベッドで一緒に眠っている。時々戯れにキスをしたり、本当に稀に触れ合ったりもするが、まだ一線は超えていない。 「(あお)、仕事終わった? もう寝る?」  そう言いながら勝手知ったるという感じで、ベッドに潜り込む。 「ああ、今日はもう終わりだ」  ソウも作業机から離れ、ユエの隣に潜り込んだ。 「お疲れ、蒼」 「(ゆい)もお疲れ様」  二人だけの時間では『蒼』『結』と呼ぶ約束はまだ成されている。最初は違和感もあったが、今ではもう慣れてしまった。  ベッドの中で向かい合いながら、ユエの白い頬に手を添えた。 「蒼……」  ユエのほうから軽く唇を重ねて、離れた。 (結はいったい。こういうことをする時どういう気持ちでいるんだろう)  ソウは大きな溜息を吐きたい気持ちになる。 (俺と同じではないよな……きっと。初めて見た相手を親と思い込むような、アレなんじゃないのか。初めて触れられた相手だから、懐いているだけ……みたいな?) 「蒼……」  ユエの手がソウの背に回り身体を擦り寄せてくる。 「結?」  ユエの態度がいつもと違うような気がした。  絡ませてきた足の間に熱を感じた。 「ライブの後でまだ興奮しているのか?」  大きな仕事を成し遂げた後にはそういうこともある。今までのユエにはなかったような気がしたが、余程今日のライブで熱くなったのだろう。  今度はソウのほうからちゅっと軽く口づけた。 「触ってやろうか?」  そう言うと何故かムッとした顔になる。そして、突然ソウの股間に触れてきた。 「……っ」 「蒼のも熱いよ」  いつになく積極的なユエにどぎまぎする。 「やっぱり、今日のライブが良すぎて興奮っぶっ」  バチンっと音がするほど両手で思い切り口を塞がれた。 「い゙だい゙よ゙ぉ゙、ユ゙エ゙〜。何怒ってんだー」  塞がれながらももごもご言っている。 「じゃあ、蒼のソレもライブで興奮したからなのっ?」 「う……っ」  絶句。 (なんだろう、今日のユエいつもと違う)  少しは人間らしくなったとはいえ、相変わらず口数が少ないユエが、これだけでも相当喋っているほうだ。しかも、口調もかなりはっきりしててトーンもいつもより高い。 「蒼、おれを壊すっていってたけど全然あの続きしないじゃん」 『あの続き』とは?  当然セックスのことだろう。まさか、ユエがそれを望んでいるとは思わず驚愕する。 (いや、でも、しかし……これも俺が好きだからってのとは違うかもしれない)  ソウは自分の口を塞いでいる手をそっと外し、ベッドの上に半身を起こした。ユエもそれに倣って起き上がる。  ユエの顔をじっと見て、コホンと一回わざとらしい咳払いをする。そして、彼の両肩に手を置いた。ひどく真面目くさった声音で。 「結、この間はああは言ったが、セックスはやっぱり愛し合う者同士がするものだと、俺は思う。気持ちのないセックスは、お互い傷つく……まぁ、最後までじゃなくても、キスしたりナニしたりしてた俺が言うなって感じだけどな。でも、それは――」  自分の気持ちを伝えるか躊躇していたら、目の前でユエが眦を釣り上げていた。

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