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冒頭部分はとりあえずななめ読み。
ドラムのヒビキが事故死し、傷心のメンバーたちは薔薇に囲まれた館に身を寄せる。そこはユエの親戚筋の館で、持ち主は吸血鬼伝説の元となったエリザベート・バートリーの血筋だという噂がある。
小説では二章目に当たるソウとユエの場面。ここはキスシーンとソウがソファーの上にユエを押し倒す。原作にあるシャツをはだけさせるとか乳首を吸うとかはなし。
ふむふむとまだこのあたりは冷静に読める。
(キスシーンをトワが覗いちゃうんだよな〜)
ストーリーの中のトワはユエ以外目に入らないくらいに焦がれている。
(実際のトワがどの程度ユエのことを思っているのか、わからないけど。でもいつも無表情無感情のトワの心を揺り動かすのはユエだから……このシーンを見るトワもきっとキツいだろうな……それを見ているというオレもなぁ……まぁワンチャン、全部別撮りの可能性もあるけど)
トワと自分のためにそれを祈る。
前半はざっと目を通す。
(わりにトワとユエのキスシーンもあるような……)
夏休みに入り一緒に過ごすことになったソウの従妹のアリス。アリスを連れてきたマネージャーのハクト。二人は館から姿を消す。アリスは自室で死んでいるところをソウが発見する。
少しずつおかしくなっていくユエ。
ソウしか求めないユエを、嫉妬に駆られ襲い掛けるトワ。それを止めるウイ。
(あ、オレか!)
いよいよトワとウイのラブシーン。
(『ラブ』はないよな〜~。や、あるけど、『ウイ』の一方的なラブが)
もうすでに原作を読んでいるウイは、このシーンが愛する者同士がセックスするシーンではないことを知っていた。『トワ』から『ユエ』の代わりになれと言われ、『ウイ』はそれを承知する。『ウイ』は『トワ』が好きだから、一度でいいから抱かれたいという切ないシーンなのだ。
「オレだったらどうする?」
つい声に出して言ってしまう。
(いや、ムリでしょ〜。この話の中では自分たちは死ぬだろうと分かっているからできることであって、この先もメンバーとしてやっていかなきゃいけないのに、『代わり』とか『一度でいい』とか気まずすぎる)
気を取り直してその気まずいシーンを読み進める。
読んでいくうちに白い肌が赤みを帯びていく。
『ウイ』は『トワ』に口づける。
それから、『トワ』の心臓のあたりにある薔薇のタトゥーにも。
『トワ』は『ウイ』をベッドに押し倒し、服のボタンを外していく……。
そして、事後。
「はぁー」と、溜息のような、安堵の息のような、大きな息を漏らす。
「だよねー」
原作にあるセックスシーンはほとんど省かれていた。
(さすがに事細かにはやらないか。それにオレら主役カプじゃないし、もうちょいやるとしたら『ソウ』『ユエ』だろー)
しかし、はたっと気づく。
(キス……って本当にするのか? それともフリだけ? フリっていってもめっちゃ顔近づけなきゃいけないよな。今までそんだけ接近したことないし。や、オレ耐えられる〜?)
顔を両掌で被 ってふるふると横に振る。ほんのり赤かった顔が真っ赤になっていた。
「それと!」
ビシッと台本のある部分を指す。
(事後に『ソウ』が訪ねて来た時、バスローブ姿の『ウイ』の足を赤いものが滴ってくる……っていうのはなかった!)
再び安堵。今のウイの感情はとにかく忙しい。
それは、挿入して傷ついて、血が足を伝い流れてくるという場面だ。それを見て『ソウ』は二人の仲を疑う。しかし、台本にはただバスローブ姿で『ソウ』に応対する。彼はそれだけで『何か』を察する表情をする、となっている。
(あれって、ある意味、セックスそのものよりも衝撃的なシーンだよなー。オレがそれやるってなったら小っ恥ずかしいし、なくてよかったよ〜)
ウイはとりあえず台本を置いた。
ここまではどうやらホラー色のほうが大きいように思える。BL色ももちろんあるが。
(『ユエ』なんかだんだん鬼気迫ってくるんだけど、本当にこれあのユエが演るのか? っていうか、ソウ以外は誰も演技したことないのに。思い切った人選だなーしゃっちょー。大コケしても、オレ、知らなーい)
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