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 社交室は、中央の大階段を二階まで上がりきり、吹き抜けの左側にある。 「おはようございます」  シウのあとをついて部屋に入った一行は、すでに中で待機している面々に挨拶をする。 「わぁ〜部屋の中も素敵〜」  さすがに小さな声だけど、きゃっきゃっとはしゃぐ双子。  毛足の長い絨毯が敷き詰められた広い室内。天井にはシャンデリア。扉の反対側全面が窓で、バルコニーに繋がっている。左側の壁にはテーブルクロスのかけられた長テーブルがあり、右側には長椅子と低いテーブル。それからグランドピアノ。  撮影用のセットなのか、それとも元々備えられていたものなのか。  家具は皆骨董価値のあるもののように見える。  鎌田監督、北海助監督、脚本家宮内、カメラマン英、そして今回も原作者の桜乃がいたたまれない感じで端に座っている。役者陣とシウも席に着く。それ以外のスタッフは席が足らず後ろ側に立っている。  まずは監督からの挨拶と撮影スケジュールの説明があった。 「この館で撮影される部分は時系列に沿って行います。そのほうが登場人物の気持ちに入りやすいから、演技初めての人にはいいでしょう」  演技初めて陣、ウイは鼻をぽりぽりと掻き、トワは腕組みして無表情、ユエは自分のことを言われているとも思っていない様子。  しかし、撮影第一号はこのユエだ。 (大丈夫なのか、ユエちん) 「今日の撮影は、冒頭の『ユエの夢』部分。20時から撮影開始。ユエは残ってあとは解散」  あとは解散と言われたが当然ソウは付き添いで残るだろう。 「ソウは残るんでしょ?」  のそのそと席を立ち、監督のところに行くユエを横目で見ながら、ウイが話しかける。 「ああ。それと、桜乃先生と劇中で使われる『黒薔薇の葬送』についての相談をする」 「あ、オレも」  そう言ったのはシウだった。 『黒薔薇の葬送』は作中、BLACK ALICEの発表されることのなかった最後の曲ということになっている。 「MV撮影の参考に」  その曲を映画の主題歌として実際に作ることとなった。作中ではユエが作ったという設定だが、本物のユエはまだそこまでの域に達していないので作詞作曲ソウということになる。そして、MV撮影はシウ。 「なるほど。じゃあ、オレたちは先に休憩させてもらいますね〜」 「じゃあ、俺はこれで。またドームの撮影の時に。差し入れはメンバーに運ばせたから」  東京に戻るというヒビキをウイとトワは見送りに駐車場まで来ていた。エンジンをかけて待機していた車には、無限のメンバーが二人乗っていてこちらに向かって会釈している。ウイはにこにこしながら小さく手を振る。 「差し入れありがとうございます〜。また様子見に来てくれてもいいですよ〜」 「時間があったらね」  ヒビキが車に乗り込むとすぐに発進した。  残った彼らの後ろから、きゃぴきゃぴした声が聞こえてきた。朝顔と向日葵だ。女性マネージャーが同行している。 「あれ、きみたちも帰るの?」 「あ、ウイさん。そうなんですよ〜」 「私たちの撮影後半なのでその時にまた来ます。あー、一泊くらい泊まりたかったなぁ」 「仕方ないよ、夜にサクラ・ステージあるから」  ひと月丸々映画撮影以外の仕事なしのBLACK ALICEと違って、皆それぞれ忙しいらしい。 「そうなんだ、頑張って!」 「ありがとうございます」  ツインスターの二人もそう言って去っていった。  ふと見ると自分たちの乗ってきたバンのところにハクトがいた。 「ハクトさん」  ウイはハクトの元に小走りで近寄っていき、その後ろを悠々とした足取りでトワがついていく。 「荷物運びですか? オレらも運びますよ」  ひと月のロケだ。荷物はそれなりに多い。 「オレたち、これもあるもんなー」  ウイとトワは撮影の小道具としても自前のギターとベースをそれぞれ持ってきていた。  トワは黙って自分の分の荷物とベースを手に取った。 「あの二人の分は俺が運ぶから、ウイとトワは部屋に行っていいよ」 「はーい」  洋館は三階建てで撮影は主に一階二階が使用される。ここに残る役者、スタッフの部屋はほとんどが三階に割り当てられていた。 (そうだった。オレとトワの部屋って向かい合ってるんだった)  トワより二、三歩遅れて部屋の前までやってきてから思いだす。  黙って入っていくのもなんだと思い、部屋に入っていくトワの背に向かって、 「トワたん、じゃあまたあとで〜」  そう言ったが、トワからは何も返ってこなかった。  

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