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続いて室内の撮影。
館に入ったユエが長い廊下を歩いていき、一番奥の扉を開ける。
物語では地下室に入るのだが、地下室はないためその後のシーンは別日にスタジオのセットで撮影される。
遠ざかっていくユエの後ろ姿の撮影の後、カメラマンも一緒に動き、アップの撮影をする。
アップの撮影前に一旦ユエの衣装とメイクのチェックをする。それを眺めながら呆然とした様子でウイが言う。
「……ユエ、映画初めてだよねぇ? 確かに歩いているだけなんだけど、それでもテイク2でOKって……」
外での撮影、室内の撮影ともに二度の撮影で監督のOKが出ている。
その問に答えたのはソウだ。
「ユエは元SAKUプロの研究生だから、演技指導も受けてるはずだよ」
「え?」
「ちなみに、ハクトさんも昔SAKUプロのアイドルだった」
「ええっ? ハクトさ……っ」
思わず大声を出しそうなところをソウに口を塞がれた。
「……オレ、今日はもう部屋に戻るわ」
ソウが手を離したところでウイはそう小声で言った。こころなしか肩が落ちている。
「ああ。オレは終わるまでいるよ」
大階段は今使用できないため、撮影場所とは反対に伸びた廊下をとぼとぼと歩いていく。中央の大階段とは別の階段が左右それぞれの端にあるのを、昼間の空き時間に見取り図をじっくり見て確認していた。廊下は真っ暗ではない。壁に点々とオレンジ色の灯りがともっている。蝋燭の炎に見えるがそれを模した電灯だ。
廊下にも絨毯が敷き詰められているので、足音を消してしまう。しかし、背後に人の気配。
「トワたん、撮影見なくてもいいの?」
振り返らなくても誰が後ろにいるかウイには分かっていた。
「べつに」
短い返事が返ってきた。
「はあ〜、まさか、ユエちんが演技指導受けていたなんて。しかも、ハクトさんも昔アイドルやってたとか? 驚きだよ〜、あのハクトさんが〜。そういう情報は先にくれって話だよね」
トワは何も言わないが、ウイは気にせず話し続ける。
「ほんとに初演技なの、オレとトワたんだけじゃん。あ、実はトワたんも昔劇団とかにいたなんて言わないよね?」
「言わねぇよ」
さすがにおかしかったのか、くくっと笑いが漏れた。
(トワたん、笑ってる。めずらし)
ようやく一番端の階段に到着。上がり始めるとトワは横に並んでいた。
「しかし、あんたがそんなに弱気になってるなんて珍しいもん見た」
その言葉に心なしか笑いが混じっている。
「いつもへらへらしていて、本心が分からないのに」
ぎくっと心臓が変な音を立てる。
(オレになんか興味ないと思ってたのに。トワに見抜かれてる? や、当てずっぽうで言っている可能性も)
ここは話題を変えて誤魔化すことにする。
「や、それ、そのまんまトワに返すよ」
「ん? なに?」
「珍しいもん見た。トワが笑うとこ」
「笑ってねぇ」
今までのが都合のよい幻想だったかのように、ぶすっとした表情に戻っていた。
三階まで上がると、廊下を今度は大階段のほうへ向かっていく。
スタッフが気遣ってくれたのか、ウイとトワの部屋は大階段近くだった。
「ねぇねぇ、トワたんの部屋にも天蓋付きベッドとかあるの?」
部屋の前で分かれる間際。
もうすでにいつものように、へらっと笑っている。
「ある」
「わー、トワたんと天蓋付きベッド似合わなすぎる〜」
「まったく、落ち着かねぇ部屋だ」
「だと思った!」
ウイは「また明日!」と言ったがトワは何も言わず自分の部屋に入っていった。扉が閉まりきるまで眺めていたことなど、トワは気づきもしないだろう。
(なんか今日はちょっと嬉しいかも)
そう思いながらウイも自分の部屋に入った。
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