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「やっと肩の荷が下りたね〜。めっちゃ重い荷物だった」  顔はへらりと笑っているが、身体のほうは心底疲れた様子を表している。今日の『お疲れ様会』も結局のところ仕事だ。ここに来てやっとほっとする。 「だな」  トワも疲れを隠せない。ぐびぐびっとビールを呷る。会場ではまったく飲めなかったせいか、ペースが早い。 「それにしても、よくあんな話を映画になんか……」  結局原作は読まずじまいだったトワ。もし原作読んだらもっとすごい顔になりそうだと内心思う。 「ほんとだよね。映画化の話聞いた時はまさかと思ったし、本気でBL展開するとは思わなかった」 「BL……」  トワは何故かその言葉を口の中で呟いてから、またぐびぐびっと飲む。それから缶を振り、中を覗き込んだ。どうやら空になったらしい。黙ってゆっくり立ち上がろうとしたところで、ウイのほうが先に立ち上がった。 「おかわり? まだ冷蔵庫にある?」  トワは床に尻を戻して「ああ」と答えた。ウイは、勝手知ったる、といった様子で、ささっとキッチンに入り冷蔵庫を開ける。缶ビールを一本持って戻ってくる。その様子をじっと見ていたらしいトワと目が合い、ニコッと笑った。  ビールを手渡すと今度は向かい側ではなく、トワの隣に陣取った。本当は最初から隣に座りたかったのだ。それなのにそうしなかったのは、本来のウイはそんなふうにぐいぐいいくことができないからだ。 「ウイは?」  缶を開け一口飲み、テーブルに置く。 『あんた』ではなく、名を呼ばれて内心どきんっとする。名を呼ばれる時は大概二人の距離が近づく時だ。そして、その先には――。 「まだ入ってる」  缶を持って軽く振るとちゃぷちゃぷと液体が揺れる音がする。 「それにオレはけっこうあっちで飲んだからな〜。トワたんは飲んでいいぞぉ〜」  戯(おど)けて言いながら、つまみのナッツに手を伸ばす。  どことなく甘い雰囲気を感じて胸をざわめかせるが、そこから気を逸らすためにいつも通りの自分を演じる。 「ふうん」  トワはわざわざウイの背後から手を回し、テーブルの上の缶を取った。自然二人は密着するような形を取った。  ごくごくっという喉を液体が通る音が耳元でする。それだけでウイの心臓はうるさくなる。 (トワ、酔ってるのかな。そんなことないか、ビールくらいじゃ酔わないよな)  缶をテーブルに置いても体勢は変わらず、ウイはだんだんと身体が火照ってくるのを感じた。 「それにしても……桜乃センセも、誰もたいしたこと話していない取材だけでよくあんな話書けたよねー。しかも、事実と被ってるところがけっこうあるとか。作家さんの……や、腐女子の妄想ってすごい」  この場の雰囲気から逃れようと再び映画関係の話に戻る。そこでやめておけばよかったのだが。 「腐女子っていえば同人誌じゃ、たいがいオレたちがカプなんだよ〜」 「なんだ、同人誌って」 「腐女子たちが勝手に妄想して書いた小説や漫画を本にしたもんだよ。オレたちBLACK ALICEもそれなりに需要があるんだ。ソウとユエはもうラブラブカップルで、オレたちはだいたいセフレとかあまり甘くない関係でセックス……」 (何しゃべってんだ、オレ)  ちらっと横を向くとトワは相変わらずの無表情。 「あーでもさー。桜乃センセも腐女子たちも実際オレたちがこういう関係とは思わないよな?」 「こういう関係って?」  その声音を聞いて、しまった、と思った。スイッチが入ったような気がした。 「え、えっと」  言葉に詰まっていると、後ろから肩に頭を埋めてくる。項に唇の感触がしたかと思うと、ちゅうっと吸い上げられる。 「ん……っ」  つい甘い声が零れてしまう。  くすっと耳元で笑う声がした。 「首も耳も真っ赤。あんた、緊張すると喋りまくるよな? 何、そんなに緊張してんの?」  もうすでに、トワの片手は衣服の下に入り込んでいた。

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