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四十七哩(愚問愚答)

 百瀬新のメールアドレスも電話番号も知らなかった。ぼくは百瀬んちのラーメン屋に行った。こういうとき商売屋はいい。アポなしで訪問しても失礼にならない。  ぼくは叉焼麵を完食してから、麻子さんにきいた。 「アラタくんいますか」 「まだ寝てるのよ。日曜日だからって、まったくいい気なもんだよ」  ぼくは二階の六畳間へ。百瀬は万年床にトランクス一丁で眠ってた。右イヤホンからブーレーズ《二重の影の対話》。生身の第一クラリネットが、自分の影のようなものと対話する。録音済みの第二クラリネットが、コンピュータ制御の六つのラウドスピーカーから交互に送りだされる。ぼくはあいつの右足にさわった。先細りの膝下十センチ。中心の骨の硬さ。あいつががばりと身を起こす。 「わあっ、なんでいるのっ」 「AV見せろよ。ニューハーフ物以外でなんかないの」  え、え、え? と百瀬は顔を両手でこすった。「ちょっと待って。頭が起きてねえの」 「早く起きろよ。昼すぎてんぞ」 「えーと、ニューハーフ以外……」  そして、あいつが上映したのは熟女物だった。夕顔の実みたいな巨乳はまだ瑞みずしいけど、陰りが見える。ぼくはあきれた。 「おまえって熟女もいけんの?」 「いや、これは男優さんが好みで……」  百瀬は赤面して、頬を掻いた。たしかに男優はいい体つきの二枚目だった。アレも立派。ぼくはじわじわと興奮した。 「おまえのストライクゾーンって広すぎじゃね?」 「うん、ストライクゾーンと心は広いよ。そのほうが楽しいでしょ」  百瀬はへらへらと笑った。チャラ男め。ぼくは百瀬の裸の肩に腕を回してみた。百瀬はまばたきする。ぼくはいう。 「おまえ、おれのことすきっていったよな」 「うん、すき」  ぼくは百瀬をそっと万年床に押し倒した。百瀬は途惑った目はしたものの抵抗はしなかった。ぼくは真顔で面長を見おろした。 「じゃあ、和姦だよな?」  百瀬は顔をひきしめて、うなずいた。「うん」  百瀬の乳首はピンクがかった薄茶色だった。つっつくと、百瀬はびくっと全身で跳ねた。 「おまえの利き乳は?」 「キキチチって?」 「より感じやすい乳首。だいたい右か左かに偏ってんだってよ」  ぼくは薄い胸に吸いついた。百瀬はAV女優みたいな嬌声をあげた。 「バカ。声でかいよ、おまえ」  ぼくはそのへんのクサそうな靴下を百瀬の口に押しこんだ。左右の乳首を交互に吸ってみる。どちらかというと右の反応が良かった。ぼくは右の乳首を吸いながら、右手をやつの胸から腹へ滑らせた。トランクスのなかで勃ちあがってる硬いやつ。布ごしにやさしく撫でてじらした。百瀬は靴下を咥えたまま、赤茶の目をとろんとさせてる。ぼくはやつのトランクスをずらした。  ぼくと同じに仮性だった。ぼくは皮を捲って、見た目に異常がないことをたしかめた。庚申薔薇色の亀頭。ぼくは断りなく口に咥えた。けっこう平気だった。いじめてやると苦い液でぬるぬるしてくる。百瀬は鼻音で鳴いて、腰を揺すった。  ぼくは百瀬の小さい尻を撫でて、指をケツの穴に入れた。びっくりしたみたいに百瀬が跳ねて、穴がひくひくと痙攣する。ぼくは指を浅く動かしながら、フェラを続けた。百瀬の体から力が抜けた。  ぼくは薬局で買ってきたオロナインのボトルをあけた。短い右足を持ちあげて、軟膏を百瀬のケツの穴に塗りこんだ。入口から奥まで。百瀬は顔を真っ赤にして、目をつむってた。時間をかけてそこを指でほぐしながら、百瀬の反応をうががう。指三本で突けるようになったころには、あいつは自分のチンコを握りこんで腰を振っていた。誰でもそうなる、自然なことやから……千葉透徹はそういった。ぼくは穏やかな心持ちになりながら、ゴムを自分のチンコにかぶせた。ぼくはもう一度きいた。 「和姦だよな?」  百瀬は涙でいっぱいの目を瞠って、うなずいた。ぼくはゆっくりとぼく自身を百瀬に埋めた。ものすごく、きつい。靴下を咥えたまま百瀬は呻いた。さすがに痛いみたいだ。やつのチンコが萎えかけてる。ぼくは百瀬をぎゅっと抱きしめて、やつの力が抜けるのを待った。  ぼくはやさしく小刻みに動いた。あいつはぼくの背中に腕を回して、苦しげに荒い息をした。  窮屈な運動を続けるうちに、またやつのチンコが(みなぎ)った。ぼくは百瀬の口から靴下を抜いた。ぼくが腰を使うたび、小さな嬌声が漏れた。 「センパイ……もっと掘って、突いて、犯して、奴隷にして」 「おまえ、AVの観すぎ」  ぼくをきゅんきゅんと締めつける熱い穴。ぼくは百瀬の大きな薄い唇にキスした。 「センパ……あ、あっ」  百瀬は顔をゆがめて、のけぞった。アレが勢いよく精を噴く。生臭いニオイ。ぼくはイく寸前に抜いて、百瀬の右足にかけた。百瀬はすすり泣いて、ぐったりと動かなくなった。     ♂ するときのおまえの耳はピグレットひときわピンクひときわお花      ♂ 「ひとつききたいんだけどさ、おまえはなんでおれがホモだと思ったわけ」  服を着こんで、ぼくは尋ねた。トランクス一丁の百瀬は、ぼくの右耳をさわった。 「右にピアスしてるから。ふつう、男は左でしょ。右にあけるのは女だよ」 「マジで。そんな意味あったの」  ぼくは頭をかかえた。芝賢治は果たしてわかっていてやったんだろうか。近いうちに左にもピアスをあけようと思った。 「おれ、タチ志望だったんだ」  百瀬がぽつりといった。ぼくは顔をしかめた。 「いやだったわけ?」 「んー、ちょっと痛かったけど、途中からよかったし、女の気分もわかったからオッケーかな」 「おまえさ、マジでおれの奴隷になる気ある?」  百瀬はご褒美をぶらさげられた犬みたいな目をした。「なる」 「じゃ、まず、おれには敬語ね」 「うん……はい」 「それから、絶対とはいわないけど、よそでむやみやたらにセックスしないこと」 「はい」 「それから……うーん、とくにないな」 「ないの?」 「敬語」 「はい」 「それと、手伝ってほしいことがあるんだ」  ぼくは計画を打ち明けた。百瀬は驚いた顔はしたけど、嫌だとはいわなかった。

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