48 / 55
四十七哩(愚問愚答)
百瀬新のメールアドレスも電話番号も知らなかった。ぼくは百瀬んちのラーメン屋に行った。こういうとき商売屋はいい。アポなしで訪問しても失礼にならない。
ぼくは叉焼麵を完食してから、麻子さんにきいた。
「アラタくんいますか」
「まだ寝てるのよ。日曜日だからって、まったくいい気なもんだよ」
ぼくは二階の六畳間へ。百瀬は万年床にトランクス一丁で眠ってた。右イヤホンからブーレーズ《二重の影の対話》。生身の第一クラリネットが、自分の影のようなものと対話する。録音済みの第二クラリネットが、コンピュータ制御の六つのラウドスピーカーから交互に送りだされる。ぼくはあいつの右足にさわった。先細りの膝下十センチ。中心の骨の硬さ。あいつががばりと身を起こす。
「わあっ、なんでいるのっ」
「AV見せろよ。ニューハーフ物以外でなんかないの」
え、え、え? と百瀬は顔を両手でこすった。「ちょっと待って。頭が起きてねえの」
「早く起きろよ。昼すぎてんぞ」
「えーと、ニューハーフ以外……」
そして、あいつが上映したのは熟女物だった。夕顔の実みたいな巨乳はまだ瑞みずしいけど、陰りが見える。ぼくはあきれた。
「おまえって熟女もいけんの?」
「いや、これは男優さんが好みで……」
百瀬は赤面して、頬を掻いた。たしかに男優はいい体つきの二枚目だった。アレも立派。ぼくはじわじわと興奮した。
「おまえのストライクゾーンって広すぎじゃね?」
「うん、ストライクゾーンと心は広いよ。そのほうが楽しいでしょ」
百瀬はへらへらと笑った。チャラ男め。ぼくは百瀬の裸の肩に腕を回してみた。百瀬はまばたきする。ぼくはいう。
「おまえ、おれのことすきっていったよな」
「うん、すき」
ぼくは百瀬をそっと万年床に押し倒した。百瀬は途惑った目はしたものの抵抗はしなかった。ぼくは真顔で面長を見おろした。
「じゃあ、和姦だよな?」
百瀬は顔をひきしめて、うなずいた。「うん」
百瀬の乳首はピンクがかった薄茶色だった。つっつくと、百瀬はびくっと全身で跳ねた。
「おまえの利き乳は?」
「キキチチって?」
「より感じやすい乳首。だいたい右か左かに偏ってんだってよ」
ぼくは薄い胸に吸いついた。百瀬はAV女優みたいな嬌声をあげた。
「バカ。声でかいよ、おまえ」
ぼくはそのへんのクサそうな靴下を百瀬の口に押しこんだ。左右の乳首を交互に吸ってみる。どちらかというと右の反応が良かった。ぼくは右の乳首を吸いながら、右手をやつの胸から腹へ滑らせた。トランクスのなかで勃ちあがってる硬いやつ。布ごしにやさしく撫でてじらした。百瀬は靴下を咥えたまま、赤茶の目をとろんとさせてる。ぼくはやつのトランクスをずらした。
ぼくと同じに仮性だった。ぼくは皮を捲って、見た目に異常がないことをたしかめた。庚申薔薇色の亀頭。ぼくは断りなく口に咥えた。けっこう平気だった。いじめてやると苦い液でぬるぬるしてくる。百瀬は鼻音で鳴いて、腰を揺すった。
ぼくは百瀬の小さい尻を撫でて、指をケツの穴に入れた。びっくりしたみたいに百瀬が跳ねて、穴がひくひくと痙攣する。ぼくは指を浅く動かしながら、フェラを続けた。百瀬の体から力が抜けた。
ぼくは薬局で買ってきたオロナインのボトルをあけた。短い右足を持ちあげて、軟膏を百瀬のケツの穴に塗りこんだ。入口から奥まで。百瀬は顔を真っ赤にして、目をつむってた。時間をかけてそこを指でほぐしながら、百瀬の反応をうががう。指三本で突けるようになったころには、あいつは自分のチンコを握りこんで腰を振っていた。誰でもそうなる、自然なことやから……千葉透徹はそういった。ぼくは穏やかな心持ちになりながら、ゴムを自分のチンコにかぶせた。ぼくはもう一度きいた。
「和姦だよな?」
百瀬は涙でいっぱいの目を瞠って、うなずいた。ぼくはゆっくりとぼく自身を百瀬に埋めた。ものすごく、きつい。靴下を咥えたまま百瀬は呻いた。さすがに痛いみたいだ。やつのチンコが萎えかけてる。ぼくは百瀬をぎゅっと抱きしめて、やつの力が抜けるのを待った。
ぼくはやさしく小刻みに動いた。あいつはぼくの背中に腕を回して、苦しげに荒い息をした。
窮屈な運動を続けるうちに、またやつのチンコが漲 った。ぼくは百瀬の口から靴下を抜いた。ぼくが腰を使うたび、小さな嬌声が漏れた。
「センパイ……もっと掘って、突いて、犯して、奴隷にして」
「おまえ、AVの観すぎ」
ぼくをきゅんきゅんと締めつける熱い穴。ぼくは百瀬の大きな薄い唇にキスした。
「センパ……あ、あっ」
百瀬は顔をゆがめて、のけぞった。アレが勢いよく精を噴く。生臭いニオイ。ぼくはイく寸前に抜いて、百瀬の右足にかけた。百瀬はすすり泣いて、ぐったりと動かなくなった。
♂
するときのおまえの耳はピグレットひときわピンクひときわお花
♂
「ひとつききたいんだけどさ、おまえはなんでおれがホモだと思ったわけ」
服を着こんで、ぼくは尋ねた。トランクス一丁の百瀬は、ぼくの右耳をさわった。
「右にピアスしてるから。ふつう、男は左でしょ。右にあけるのは女だよ」
「マジで。そんな意味あったの」
ぼくは頭をかかえた。芝賢治は果たしてわかっていてやったんだろうか。近いうちに左にもピアスをあけようと思った。
「おれ、タチ志望だったんだ」
百瀬がぽつりといった。ぼくは顔をしかめた。
「いやだったわけ?」
「んー、ちょっと痛かったけど、途中からよかったし、女の気分もわかったからオッケーかな」
「おまえさ、マジでおれの奴隷になる気ある?」
百瀬はご褒美をぶらさげられた犬みたいな目をした。「なる」
「じゃ、まず、おれには敬語ね」
「うん……はい」
「それから、絶対とはいわないけど、よそでむやみやたらにセックスしないこと」
「はい」
「それから……うーん、とくにないな」
「ないの?」
「敬語」
「はい」
「それと、手伝ってほしいことがあるんだ」
ぼくは計画を打ち明けた。百瀬は驚いた顔はしたけど、嫌だとはいわなかった。
ともだちにシェアしよう!