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番外編2 俺が見つけた男(フィルバート視点)

   朝焼けの中で目を覚ましたとき、フィルバートは深く絶望した。  頭上にかざした自身の掌は、ひどく小さくて頼りない。目が覚める前までは大人のものだった手が、今は柔らかい子供の手に変わってしまっている。フィルバートはゆっくりと起き上がると、覚束ない足取りで部屋に置かれた鏡へと近付いていった。  鏡を覗き込むと、まだ十代前半の年頃の自分の姿が映って、フィルバートはとっさに膝から崩れそうになった。ぐらつく膝を必死に立たせながら、小刻みに震える指先で頬に触れる。 「あぁ……本当に戻ってきたのか……」  自分でも嫌になるぐらい陰鬱で、絶望に満ちた声音だった。実際、過去に戻ってこれたという喜びは欠片もなかった。むしろ、これから訪れる未来を考えると息苦しさを覚えて、胸が締め付けられる。  痛む左胸を右手で押さえながら、フィルバートはうめくような声で呟いた。 「どうしろと言うんだ」  その声音には、自分を過去に戻した生贄の魂たちへの非難が滲んでいた。  確かに後悔したまま死ぬのは嫌だとは思ったが、だからといって魔女を殺すためにもう一度人生をやり直させられるなんて苦行でしかなかった。あんな惨めで無意味な人生を、もう一度繰り返すのだけは耐えられない。そして再び魔女と出会った自分がこの国を地獄に変貌させないとは言い切れず、それがフィルバートには震えが走るほど恐ろしかった。 「どうすればいい……」  唇から勝手に弱音が零れてくる。鏡に映る幼い自分は、途方に暮れたように自分自身を見つめていた。その哀れげな眼差しを見ていると、不意に燃えるような憎悪が腹の底から込み上げてくるのを感じた。何を被害者面してやがる。全部お前が、お前が弱かったから―― 「何もかも、お前のせいじゃないか」  自分自身へと向かって吐き捨てた瞬間、不意に目蓋の裏が真っ赤に染まるような怒りを覚えた。その色は、前の人生でフィルバートが殺した何千何万人もの血の色だ。耐えられず、鏡へと向かって拳を思いっきり叩き付ける。  鏡が割れる激しい音が響いて、拳に激痛が走った。部屋の中に飛び込んできた従者が、割れた鏡を見て悲鳴のような声をあげる。 「フィルバート様……手が……!」  その叫び声を聞きながら、フィルバートはただ自分の拳から溢れる血をじっと眺め続けた。 ***  過去に戻ってきてからも、ただ無為(むい)な日々が続いた。前の人生と変わらず、フィルバートの目から見える世界は、不条理で、不平等で、濁り切っていた。正しき者が貶められ、腐った卑怯者が得をするような世界で、空っぽな自分が何かを変えられるとは思えなかった。  日々、胸を圧迫するように憂鬱ばかりが膨らんでいく。常に息苦しさがつきまとって、いっそのこともう一度人生を終わらせてしまいたいとすら思う。それでも、自死を選ぶことはできなかった。もし死ぬのならば、前の人生で行った悪行の贖罪を果たしてからだと決めて、フィルバートは不当な方法で栄華を得た悪徳貴族たちを告発して、財産を奪い取ったりした。前の人生では高笑いしていた悪徳貴族たちが阿鼻叫喚する姿を見たときだけは、胸がスッとして心が安らいだ。  それでも、フィルバートの心はまだ空っぽなままだった。ただ恐怖と罪悪感に追い立てられているだけで、未来への希望や他者への愛情も自分の胸には欠片もなかった。 ――このままでは、また魔女に操られる。  そう思うと、焦燥のあまり壁に頭を打ち付けたくなった。  いっそのこと、マルグリットを今のうちに殺してしまえばいいのか。だがマルグリットを殺しても、生贄たちの魂が解放されるわけではない。魔女を殺すのであれば、このままマルグリットを生かしておいて魔女を召喚させなくてはならない。  歯噛みするような苛立ちと焦りに追われながらも、過去に戻ってから数ヶ月の月日が経過した。  そして、ブロッサムバンケットの当日、フィルバートは予想外な人物と出会うことになった。 「私は、この国にとって『決して失うことのできない人材』になりたいと望んでおります」  謁見中にふと耳に入ってきた言葉に、フィルバートは床へと伏せていた目をパチリと大きく瞬かせた。  視線を上げると、大階段の下に横一列に並んだブラウン家の面々が見える。その四名の姿を見て、フィルバートはとっさに顔を歪めそうになった。脳裏によみがえってきたのは、前の人生で彼らの首が斬り落とされた瞬間だ。断頭台に転がった四つの首を思い出した途端、胸がざわつくような罪悪感を覚えて、フィルバートは再び視線を伏せた。だが、そのとき、また聞き覚えのない台詞が耳に届いた。 「いいえ、私が望んでいるのは平和と安寧だけです」  前の人生で、こんな台詞を聞いた覚えがなかった。  もう一度顔を上げて見やると、長身の少年がどこか据わった眼差しで王を見上げていた。少年といっても先ほど十六歳になったと言っていたから、今のフィルバートよりも三歳年上だ。華やかな顔立ちではないが、パーツの一つ一つは綺麗に整っている少年だった。柔らかそうな茶色の短髪と淡い薄緑色をした瞳がやけに印象的で、妙に目を奪われる。その少年は、先ほど『ニア・ブラウン』と名乗っていたはずだ。  ニア・ブラウンを見つめたまま、フィルバートは前の人生のことをゆっくりと思い返した。  前の人生で、ニア・ブラウンは真面目一辺倒な青年だったはずだ。目立つような功績もないが、だからといって後ろ暗いところもない。ただ、日々の業務をコツコツとこなしているような、凡庸で善良なだけの男だった。  だが今、王に対して挑発的な言葉を返す姿は、フィルバートが知るニア・ブラウンという男ではなかった。 「だから、戦うのです」  王をまっすぐ見据えたまま、ニア・ブラウンが言い放つ。まるで運命に挑むような台詞を聞いた瞬間、フィルバートは自身の心臓が打ち震えるような感覚を覚えた。 ――ああ、こいつも覚えているのか。  そう思った途端、たった一人の仲間を見つけたような安堵とともに、『なぜなのか?』という疑問も込み上げてきた。 ――なぜ、こいつが前の人生の記憶を残しているのか。  前の人生で、フィルバートとニア・ブラウンはほとんど何の関係もなかった。彼の妹であるダイアナ・ブラウンとは確か婚約を結んでいたが、婚約者とも呼べないほどフィルバートは彼の妹に何の感情も抱いていなかったし、積極的に関わることもなかった。ニア・ブラウンとも、直接言葉を交わしたことすらない。そんな相手が、なぜ自分と同じように過去に戻ってきたのか。  疑問を抱えながら、じっとニア・ブラウンを凝視する。謁見が終わって立ち去ろうとしたとき、ニア・ブラウンがふと王座の方を見やった。フィルバートと目が合った瞬間、ニア・ブラウンは一瞬だけ怯えたように視線を揺らした。その唇が薄く戦慄いているのが見える。だが、ニア・ブラウンはすぐにフィルバートから顔を逸らしてしまった。  その薄緑色の瞳が見えなくなってしまったことに、フィルバートはどうしてだかひどく名残惜しい気持ちになった。  バルコニーに置かれた椅子に腰掛けたまま、フィルバートは城内庭園で行われているパーティーを見下ろしていた。  視線の先には、先ほど謁見で見たニア・ブラウンの姿がある。王との謁見を終えて、貴族たちは皆くつろいだ様子でパーティーを楽しんでいるようだった。ニア・ブラウンも先ほどの緊張した面持ちとは変わって、穏やかな笑みを浮かべて妹と話している。 「なぜなんだ」  唇からぽつりと独り言が零れていた。 ――なぜ、あの男が選ばれたのか。  何度考えても答えは出なかった。ただ胸の奥が焦げ付くような感覚ばかりが込み上げて、鼓動が妙にかき乱される。  いっそ直接声をかけて『前の人生のことを覚えているのか』と単刀直入に訊ねてみればいいのか。だが、きっと彼は自分を処刑したフィルバートのことを恨んでいるだろう。下手に打ち明ければ、逆上して殺される危険性もある。ブラウン家は代々騎士団に勤めてきた大斧使いの武人家系だ。流石に大斧で襲われたら、フィルバードも無傷ではいられないだろう。  ならば前の記憶を残していることは黙っているのが最善だろうが、だからといって前の人生を覚えている唯一の人間をこのまま放任する気にもなれなかった。きっとニア・ブラウンが過去に戻されたことにも、何かしら理由があるはずだ。  そんなことを考えていると、ふと涼やかな声が聞こえてきた。 「気になるお方でもいらっしゃいましたか?」  視線を向けると、ティーカップに紅茶を注いでいるクロエが見えた。フィルバートの前にティーカップを置きながら、クロエが眼鏡の奥からじっとこちらを見つめてくる。 「なぜだ」  フィルバートが端的に訊ねると、クロエは軽く肩をすくめた。 「パーティー会場の方をずっと気にされている様子でしたので」 「他に見るものがないからな」 「毎年そう言って、すぐに部屋に戻っているではないですか。今回に限ってこちらに来られたのは『何か見たいもの』でもあったのかと思いまして」  試すようなクロエの口振りに、フィルバートは緩く目を細めた。踏み込んでくるな、と言うように見据えるが、クロエが引く様子はない。フィルバートは諦めたように小さく息を漏らすと、紅茶を飲みながら庭園へ視線を落とした。  ニア・ブラウンは、ダンスホールで妹と踊っている様子だった。妹を見つめる眼差しは慈愛に満ちていて、ランプに淡く照らされた表情は幸せそうに緩んでいる。その表情に、フィルバートはまた自身の心臓がジリッと焦げ付くのを感じた。 「あの男をどう思う」  そう呟くと、クロエは覗き込むようにしてフィルバートの視線の先を見据えた。わずかに沈黙した後、クロエが困惑した声で呟く。 「男性の方ですか? あの美しい少女ではなく?」 「ああ、男の方だ」  フィルバートがそう答えると、クロエはわずかに眉根を寄せた。しばらく言葉を探すように押し黙ってから、ぽつりと呟く。 「率直に言わせて頂きますと、特筆するところのない平凡な印象の方です」 「平凡か」 「優しそうな顔立ちはしています」  無理やり捻り出したようなクロエの返答に、フィルバートは思わず小さく笑い声を漏らした。拳を口元に当てたまま、肩を揺らして笑う。  妙にご機嫌に見えるフィルバートの様子に、クロエが一瞬驚いたように目を丸くする。だが、すぐさま無表情に戻ると、クロエは淡々とした口調で訊ねてきた。 「あの男性をお気に召されたのですか?」 「気に入ったというよりも……気になるのか?」  自分自身に問い掛けるように呟く。首を傾けるフィルバートを見て、クロエが問い掛けてくる。 「宜しければ、フィルバート様の元にお呼びしましょうか」  確かめるようなクロエの口調には、明らかに『意図』が篭もっていた。それは話し相手などという生ぬるい理由ではなく、フィルバートの『閨の相手』としてニア・ブラウンを呼び寄せるということだろう。  実際、フィルバートが一言『気に入った』と口に出せば、このパーティー会場にいる誰でも、そういう相手として呼び出すことはできる。王族が気に入った相手を、性技の相手として召し抱えるのはよくあることだ。  クロエの言葉に、フィルバートは緩く頭上を仰いで目を閉じた。目蓋の裏で、ぼんやりと想像する。  あの善良そうな男をベッドに組み敷いて、薄緑色の瞳を真上から見下ろす。涙で溶けるように濡れた薄緑色の瞳が、怯えたようにフィルバートを見上げてくる。その光景を想像した瞬間、ぞわりと背筋が戦慄くのを感じた。  とっさに咽喉を片手で押さえて、生唾を呑み込むのを堪える。それでも皮膚に、細波のような高揚が広がっていた。 「いや、いい」  かすかに強張った声で返しながら、フィルバートは椅子から立ち上がった。 「どちらへ?」 「少し歩くだけだ」  訊ねてくるクロエの声に、短く返す。バルコニーから室内へ戻ると、控えていたヘンリー・ハイランドが後ろに付き従ってきた。父親に続いて次期ロードナイトの座を狙う、野心家な青年だ。ヘンリーの存在を黙殺したまま、フィルバートはそのまま階下へと降りていった。  そのまま、パーティー会場から離れた温室へと向かう。なぜ自分が温室へ向かっているのか、フィルバートには上手く理解できなかった。確か、前の人生ではこの温室で彼の妹と出会って、初めて言葉を交わしたのだ。その出来事が原因で、彼の妹と婚約を結ぶことになったのを思い出す。 ――ここに来れば、ニア・ブラウンとの接点ができるはずだ。  急いたような思考が頭を過っていく。そうして、フィルバートの読みはドンピシャで的中した。 「フィルバート様!」  温室で名前を呼ばれた瞬間、胸の奥から込み上げたのは純然たる歓喜だった。  喜びを隠して振り返ると、そこにはニア・ブラウンが立っていた。どこか覚悟を決めた表情で、フィルバートをまっすぐ見据えている。恐怖と憎悪が入り交じった薄緑色の瞳は、月夜に光る獣の眼球のように輝いていた。そのギラつく瞳が自分に向けられていることに、どうしてだか途方もない満足感を覚える。 「何だ、ニア・ブラウン」  わざと抑えた声で問い掛けると、ニア・ブラウンは驚いたように目を見開いた。まさか自分の名前を覚えていたのか、と言わんばかりの表情だ。その表情を見て、この男は感情がそのまま顔に出るタイプなのだな、と思う。ニア・ブラウンの裏表のない愚直さも、フィルバートには好ましく思えた。  その後、ニア・ブラウンの口から出てきた言葉も、フィルバートにとっては予想外で、ひどく愉快なものばかりだった。  ヘンリーの首を絞めて気絶させたととんでもないことを言ったかと思えば、今度はフィルバートに『ひとめぼれ』したなどとおかしなことを言い出す。おそらくパニックになってうっかり妙ちきりんな言葉が出てきたのだろうが、それすらもフィルバートには面白かった。  腹を抱えて笑いながら、フィルバートは過去に戻ってから初めて自分が声をあげて笑っていることに気が付いた。こんなにも楽しく、清々しい気分になったことは前の人生でもない。自分がふわふわと浮ついた心地になっていることが、ひどくおかしかった。  無邪気に笑うフィルバートを見て、ニア・ブラウンは顔面を赤やら青やら白やら様々な色に変化させている。感情がそのまま素直に出てくる姿が、無性に可愛らしく見えた。  だが、その気分も視界の端にチラついた影のせいで、一気に萎んでいった。温室の外側で、黒い影が蠢いている。それは、先に温室に入っていたロキや彼の妹の気配ではない。おそらく先日マルグリット傘下の大臣の不正を暴いて鉱山をすべて奪い取ったから、その腹いせで刺客を送ってきたのだろう。  腰に携えた剣へと手を伸ばしながら、フィルバートはニア・ブラウンに言い放った。 「俺に惚れてると言うなら、まずは俺を守ってみろ」  その後のニア・ブラウンの活躍は、フィルバートにとっては予想以上のものだった。馬鹿力だとは聞いていたが、それ以上に戦闘に対する勘が良く、身体の動きに一切の迷いがない。一撃で刺客を吹っ飛ばす臀力(ひりょく)には、フィルバートも目を剥いた。おそらく相当の訓練をつんで、己の肉体を破壊する直前まで鍛えてきたのだろう。 ――これは、相当な逸材かもしれない。  そう思うと、ぞわぞわと高揚が湧き上がって、皮膚に鳥肌が浮かんだ。  だが戦闘直後に、ニア・ブラウンが毒に侵されたのを見て、フィルバートはひどく困惑した。こんなところで死んでしまうのか。いや、わざわざ過去に戻ってきた男が、こんなところで死ぬはずがない。死なせてたまるものか。そう思いながら、地面に倒れたニア・ブラウンに問い掛ける。 「死にたくないか」  ぽつりと訊ねると、握り締めた掌がギュッと強く握り返された。その強い力に、フィルバートは思いがけず胸を打たれた。  過去に戻ってから、自分はずっと『終わりたい』という希死念慮(きしねんりょ)じみた憂鬱に襲われていた。だが、ニア・ブラウンは違う。この男は必死に戦って、二度目の人生を生き抜こうとしているのだ。  そう考えた瞬間、不意に胸の奥にポッと小さな灯りがともったように感じた。暗闇に覆われていた世界に、一筋の光が射し込んだような気がする。空っぽだったフィルバートの世界に、じわじわと温かい何かが流れ込んでくる。  フィルバートはニアの手を離すと、絶命した刺客に近付いた。短刀を手に取って、刺客の腹を一息に引き裂く。瞬間、ロキや彼の妹が小さく悲鳴を上げた。  悲鳴を無視して腹を引き裂いていくと、胃袋の中に革袋に包まれた小瓶が入っているのを見つけた。それを見て、フィルバートはかすかに口角を吊り上げた。万が一自分たちが毒におかされたときのために、解毒剤を隠していると思っていた。  袋を破って小瓶を取り出すと、中身を口に含んでニア・ブラウンの下顎を強引に掴む。そのまま躊躇いもなく、その唇に口付けた。唇の隙間から解毒剤を流し込んで、ぐったりと目を閉じているニア・ブラウンへと囁きかける。 「飲み込め」  静かに命じると、ニア・ブラウンの咽喉が鈍く動いた。何度も口移しで解毒剤を飲ませていると、しばらくしてニア・ブラウンの目が薄らと開かれた。かすかに潤んだ瞳が、至近距離でフィルバートを見上げている。  その瞳を見た瞬間、フィルバートは雷で打たれたような衝撃を感じた。潤んだ薄緑色は射し込む月光に照らされて、まるで宝石のようにチカチカと目映(まばゆ)く輝いている。ペリドットのように鮮やかに煌めく瞳を見て、フィルバートは不意に『見つけた』と思った。  なぜニア・ブラウンが過去に戻って来たのか、その理由が今この瞬間に解った。この男は、フィルバートのために過去に戻されたのだ。フィルバートの空っぽな心を埋めるために、この男がどうしても必要だった。 ――この男は、俺のものだ。  そんなひどく傲慢で、独占欲じみた感情が、腹の底から湧き上がってくる。同時に、唇に歪んだ笑みが滲んだ。  顔を強張らせたニア・ブラウンを見つめて、フィルバートはこう言った。 「明日から、俺の元へ来い」  そう告げると、ニア・ブラウンは口角をひくりと戦慄かせた。愕然とした表情を見つめたまま、フィルバートは楽しげな声で続けた。 「俺の唇を奪った責任を取ってくれるだろう?」  問い掛けながら、フィルバートは頭の隅で静かに考えた。  ニア・ブラウンのすべてを手に入れるために、自分がこれからどうするべきかを。

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