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はじまり #3
再び転がり倒れる宮田の上に碧がさらに、拳を叩きこむ。宮田は内臓をえぐりだすような激痛が何度も走る。
(…くそ!!!避けられない)
宮田は自分がかなりのろまになった気がした。
「なんで、俺に構うんだ?」
碧は呻くように言った。
だけど、宮田は碧の言葉は耳に入らず、今の状況をどうにかしなければと必死になっていた。
そして、ポケットから、ナイフを取り出して碧にふりかざす。
「馬鹿にしやがって……!!」
ナイフの矛先は碧の眼の前へ向かうが碧は避けない。
一瞬、宮田がびびって矛先を鈍らせ、碧の頬へかすめるように切りつけることとなった。
碧の頬を切りつけて、血が流れ出す。
「!!!」
喧嘩だというので恐々遠巻きにして見ていたやつらが碧の血を見て騒然とする。
碧は流れ出す血にも動じず宮田への攻撃を止めない。
その瞳に狂気めいたものが垣間見え、血を流している姿が逆に美しい異形のものに思えて畏怖させる。
宮田はその碧の姿に恐怖しナイフを何度も振り上げた。何度か碧に当たり碧の手にも顔にも、どんどん傷が増えて行く。
それでも、碧はまったく動じる様子は見えない。
「っー・・コロス!!」
口走る宮田の声を聞いて碧は笑った。
「…いいよ?…別に」
喧嘩しているのにもかかわらずまるで謳うように。
突然、碧の腹が熱なる。
碧の目の前が赤くなっていって目が見えなくなった。
(ああやっと、静かになった?)
そう思いながらふらっと倒れる碧の腹にはナイフが刺さっていた。
碧が倒れ落ちる寸前に見えたのは、宮田もじっと動かなくなって倒れ落ちている様子だった。
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