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はじまり #5
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碧が「彼」と出会ったのは、中学最初の夏休みだった。
碧の母はとても美しい人だった。
今の母とは違う人だ。
碧の実母が亡くなってしまってから暫く経ってから来た母だった。
碧の実母は交通事故によって亡くなってしまった。それが、中学になったばかりの最初の夏休みの頃だった。
当時、突然いなくなってしまった母の死を受け入れられず、碧はあまり話さなくなってしまった。
心配した父親は環境が変われば碧も落ち着くだろうと思い切って亡くなった妻(碧の母親)の実家のあるイギリスへ連れて行くことにした。
碧の父が仕事ではよく訪れるイギリスであった。
碧の母はイギリス人で、碧も幼い頃から何度か長期休みになるとイギリスの祖母の所へは訪れていた。
母といつも一緒にイギリスへ行っていたので特に英語を詳しく話す必要もなく。家の中では殆ど日本語で会話をしていた。そう言った事もあって碧は、本当に簡単な英会話ぐらいしかできなかった。
だから、暫くイギリスにいて、学校もずっとこのまま留学という形にしようかと、父親に言われたが碧はあまり乗り気ではなかった。
それに、こちらの学校へ通うとなると、祖母の所でずっとともに暮らすとなることになる。祖母は日本語があまり話せなく、自分は英語があまり話せない。それはコミュニケーションがとれないし困る事になると思ったからだ。
碧の母方の祖父母は祖父はもう他界していて祖母だけだった。
祖母は、碧が日本へ戻っても1人きりになってしまう事が多いのを心配していた。
『あなたが仕事で忙しくなければいいのだけれども……』
『それはそうですが』
碧は父と祖母、2人が話し込むのを聞いていたが、英語での込み入った会話はなかなか理解できず結局どうなるのか分からず、2人をぼんやりと見ているしかなかった。
たしかに、誰も回りに知り合いもいない郊外でのんびりとして過ごすのはいいかと思う。だけどそれは、日本の片田舎だったらいいのかもしれなかったが、ここは郊外といってもイギリスだった。
『だったら、そうだ、私の知り合いの息子が日本で英語を教えていた子がいたのよ…』
祖母は思いついたように言った。
暫く日本で暮らしていて日本語が分かる祖母の知り合いの大学生の息子がいるから、英語をきちんと教えてもらったら良いと。
『私はもう歳で根気よく教える事はできないけど、彼なら大丈夫。年齢も近いから友達になればいいわ』
それが「デイヴ」だった。
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