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はじまり #6
そうして、デイヴに碧は会うことになった。デイヴは背が高くて、碧は見上げて彼の顔を見た。
深い青色の瞳が優し気な人だった。
デイヴはいきなり碧の髪をそっと撫で、
「柔らかい髪だね」
微笑みながら丁寧な日本語で言った。
それから、休みの間じゅう、碧はデイヴと過ごす事になった。
………
デイヴは、日本の子供に、きちんと英語を教えて欲しい、と頼まれたが少し憂鬱になっていた。
日本の子供は頭ばっかりよくて、生意気なイメージがあったからだった。
デイヴが日本にいた頃、英会話スクールの講師のアルバイトをしていた時は、そんな子供ばかりだった。
しかし、碧は違った。
一目見た時に、デイヴは碧の姿に目を奪われた。
綺麗な肌、柔らかそうな髪。
物腰は、静かで優雅だった。
なにもかも違っている
彼はものすごく大人びていて、とても美麗だった。
ハーフだと聞いたから生粋な日本人とも違っているのだろうと思ったけれども、イギリス人ともまた違っている。
茶色の瞳は何処か憂いを含んでいて寂しげだった。
母親をなくしたばかりだと聞いた。寂しい表情はそこからくるのかもしれない。
……触れてみたいと思った。
デイヴは碧に逢った瞬間に思わず髪に触れてしまっていた。
柔らかい髪だった。
でも本当は、"その肌へ直に触りたい"
デイヴはそんな感覚に囚われていた。
碧の祖母には”碧とぜひ友達になってあげて欲しい”と言わたが、言われなくても、そうするつもりだった。
碧の事情は碧の祖母から聞いていた。碧の不幸な出来事の上での出会いなのだが……。
デイヴはこの出会いにものすごく感謝していた。
……この碧のそばにずっといれる。
そう思うだけでデイヴの心は弾んだ。
………
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