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そして、今 #1
……
……………
……
…
……冷たい?
碧は何かヒヤっとした感触を顔に感じて目覚めた。だけど、頭は回らず一瞬何処にいるのかも分からなかった。
暫くぼんやりしていると、その目の前に突然に現れたのは竜士だった。
「目が覚めた?授業終ったよ」
冷たい感触は竜士が、碧の頬を触っていたからだった。
(俺はまた眠っていた?)
碧は竜士が保健室から出て行った後に再び眠ってしまったようだと気が付いた。
「傷の痛み止めの薬が効きすぎたみたいだ」
「起きられるか?」
「多分平気だ……」
碧は起き上がって、ベッドから出て立ち上がろうと足を床に降ろした。だが、ふらふらと一瞬立ち眩んでしまった。
「おっと!」
竜士が驚いて支えると、
「大丈夫か?帰り送るよ」
「……いや、いい大丈夫だ」
すると、後ろからにこにこ顔の山田が顔を出した。
「瑞江くん、送ってもらいなさいな」
「ほらな、山田先生もそう言ってるんだし?」
「……いや、そんな必要は…」
碧はまだ頭がぼんやりとしてすぐに言い返す事が出来なかった。
「それじゃ、よろしくね。相沢くん」
山田はそう言い放ってそのまま出て行ってしまった。
「じゃ、行くよ」
竜士は碧を支えるように手を差し伸べる。
「お前の手助けが無いとまだふらふらするみたいだからしょうがない……」
それを聞いて竜士は優しく微笑む。
「碧ちゃんはさ、もうちょっと俺を信じてよ?」
碧は竜士が一体何をしたいのかわからくて困惑する。
「信じるって言っても、今日会ったばかりなのに……」
「……ああね。でもね……」
(ほんとは、初めて会ったわけじゃないんだけどね……)
竜士は思う。
………
碧は、細身だけれども、華奢でもない。元々骨格が細くて筋肉がついていても、竜士のようにがっしりにはならない様だった。
竜士は碧より頭一つぶん大きくがっしりしていて、碧の肩を抱き抱えて歩くことが出来る。その様子は、
この二人が連れ立っているだけでも目立つのにかなり人目をひいた。他の生徒が何やらひそひそ声で陰口めいた事を言っているのが聞こえて来た。
「碧ちゃんって人気ものだね?」
冗談っぽく言う竜士だったが碧はそんな竜士に対してそっけない。
「いや、お前が変だからだ。…なんで…俺にかまうんだ?」
「んー。いいじゃん。だって、碧ちゃん綺麗だから」
碧はため息をく。
「そうやって、茶化すな。じゃあ、何故、宮田のことを知っている?」
碧は竜士のこの態度はただ自分の気を引きたいだけでは無いハズだと感じてはいる。
(宮田の事は学校の他のやつから噂で聞いたのかなんだか?今更、やつの名前を何故言うんだ?)
何が目的なのだろうと思っていた。
「だって俺、宮田の知り合いみたいなもんだから」
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