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そして、今 #2
「知り合いって?」
碧は聞き返す。だけど、
「碧さん、迎えにきました」
一人の初老の男に声を掛けられた。
いつの間にか校門近くまで歩いて来ていたらしく、その初老の男は校門前にいた。
「向山 来たんだ。いいのに」
碧はその男を見て不機嫌になる。その向山の近くには一台の黒塗りの車が止まっていた。
「お父様から迎えに行くようにとありましたので」
碧はちらっと学校の方を見た。
「迎えなんていいのに」
「心配なさってましたよ、お父様は」
「……いいよ。俺は、この友達と帰るから」
碧はさっと竜士を指した。
「…お友達ですか…?」
向山は碧のすぐ近くにいた竜士の姿を確認すると、丁寧に頭を下げた。
「私は、碧さんのお父様の運転手をしております向山と申します。どうかよろしくお願い致します」
竜士は少し驚いて、
「いえ。こちらこそ。よろしくお願いします」
思わず丁寧答える。
「運転手がいるお父さんがいるなんてすごいな碧ちゃん」
小さな声で碧にこそっと言った。さらに、
『お友達…!!お友達なんだな?俺は』
竜士は確かめるかのように小声で囁いた。
『今は…だ。そう言わないと、このまま車で帰らされてしまうし』
碧は睨み返す。
「碧ちゃん。車で帰ったほうがいいぞ。俺もいっしょに送ろうとは思ったとはいえ、混んでる電車に乗るのはつらいだろう?俺は、途中でタクシーでも拾って送ろうかと思っていたんだよ?」
竜士は今度は向山にも聞こえるような普通の話声だった。それが聞こえたのか向山も心配そうに言う。
「そうですよ、碧さん。では、そのお友達もご一緒に乗られてはどうですか?」
碧は暫くムッとしていた。
「じゃ、医者のとこまで。送ってくれ。後は、こいつと帰るから」
「お医者様。榊先生のとこですね。」
…………
……
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