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Confinement #10
…………
………
…
碧の様子がおかしい。
まるで心がどこかに行ってしまったみたいだった。
(碧ちゃんは、さっきなんて言った?)
『俺をこの現実に引き止めて、、記憶の渦に飲み込まれる』
碧は、目を覚ましたまま夢を見ているようだった。
(……記憶の渦?)
「碧ちゃん!!」
竜士は碧に声を掛ける。だけど、反応が無い。
急いで、碧の身体に毛布をまいて抱き上げる。
「美山。俺の部屋はまだあるのか?」
「もちろん、竜士さん。以前のままですよ」
「取りあえず、俺の部屋に行く、あそこのほうがいい」
…………
……
碧の頭は、混沌としていた。
(……ここは何処で、今は…?)
瞳は遠くを見ていた。
「碧ちゃん……俺が分かる?」
竜士の声が聞こえると碧はぼんやり竜士を見た。
(…竜士がいる。竜士がいるって事は、ここは『今』?)
混乱しながら竜士に聞いた。
「竜士?ここは何処?今は……何処?」
「碧ちゃん、大丈夫。ここは俺の部屋のベッドだよ。もう、なんにも心配はないから」
竜士が、ベッドの端に座っていた。
碧の頭の中の靄がだんだん晴れて行く。目を思いきり見開き
(ああ、ここは"今"だ)
そう思った。
「宮田。あいつは?」
「俺がやっつけたからね?」
「……やっつけた?」
碧は、起き上がって竜士に向かって聞いた。
「なんで?……俺のいる所が分かった?」
「あいつの行動は読んでいたんだ。でも、場所はなかなか分からなかった。2,3心当たりをさがして探し出したんだよ」
竜士は碧を抱きしめた。
「だけど、碧ちゃんを守りきる事が出来なかったね。ごめん」
竜士の腕に力が入る。
「……俺がもう、こなくていいって言ったんだ。あの時」
碧は竜士を見上げる。碧の茶色の瞳がとても綺麗だった。
「碧ちゃん、そんな顔して、そんな目して言ったら、俺、押さえが利かなくなっちゃう」
冗談めいた口調で竜士は言ったがだけど、碧はじっと竜士を見つめてそっと呟く。
「……いいよ」
「え?」
思わず竜士は聞き返す。
「ヤってもいいから」
「え?それって、抱いていいってこと?」
「そう言ってる」
「この状態の碧ちゃんを抱くなんて、壊れちゃうよ?」
碧は竜士の瞳を見て言った。
「俺はもう壊れてるから……いいんだ」
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