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昔日 #5
「……報告があった」
そう言って祖父は話し始める。
「男色等は別にいい。そんなものは、いくらでもある。ただ、それがヤクザとの関係ならば別だ。それは、まかりならない。たとえそれが、相手が女であれ同じだ。
いいか、闇の裏の世界のやつなんだよ相手は。我々も時には彼らの手を借りる時もある。だがそれは、利用させてもらうだけだ、それはお互いに、あくまでも、ビジネスとしてだ。
あの世界のやつらとは、決して深くは付き合ってはならない。
やつらに、弱みを見つけられたら付け込まれて取り込まれる。
それは、どういう事か、分かるかな?光紀」
怒っているのでもなくただ淡々と一気に言い放った。
何も言い返せない光紀をよそにさらに重ねて祖父は言った。
「お前の行動は、我々の運命に関わってくる。会社を潰しかねない」
「…それは」
そう言ったきり黙り込んでしまう光紀はとても苦しげな表情をしていた。
(……会社だって、本当は継ぎたくはない)
光紀の父は
「私が継いだら、こういう経営方針を変えるから。一族経営はもう企業が煮詰まってしまう。向上心が無くなって、みんな保身になる。そうなってはお終いなんだよ」
いつも光紀にそう言っていた。
でも、父親は。
光紀が高校に入ってすぐに、突然の心不全で亡くなってしまった。
光紀の父はしばらく他の会社の経験をするために他会社にいた後に、祖父の会社へ入社してそれからすぐのことだった。
自分も他社へ暫く行きたいと光紀は言ったが、祖父はそれを許してはくれ無かった。
祖父は、自分の息子が早くに亡くなったのは、他所に行って、心労がたたったせいだと思っていたからだ。
それが原因ではなくても、早くに息子が亡くなったのが、その所為と思い込みたいだけなのかもしれない。
父親が亡くなってから、光紀の生活の基盤はすべて祖父を頼ることと成った。
光紀の弟はまだ小学生だったし父親が亡くなっておろおろするばかりの母親と、まだ学生の身の上の自分には……必然的にそうするしかなかったからだ。
1人で逃げ出して生活すればいいことかもしれない。だけど、母と弟を残してなんてできない。
(……祖父に従うしか、今の自分には無いのか?)
光紀の中では龍介との付き合いは学生の時だけ。と何処かではそう思っていた。
だけど
(でも、こんなに早くとは……)
「……考えさせて下さい」
光紀はそれだけ言うのが精一杯だった。
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