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昔日 #6

……… …… … 「……さん、龍介さん」 光紀を見送っていた龍介は後ろから自分を呼ぶ声に気がついて振り向く。 「ああ、美山か」 そこにいたのは龍介の監視役を担っている美山という者だった。 美山は、かつて新宿で有名な不良少年だった。 (……うちの親父が気に入って、うちに入れたんだよな) 当時、彼は中学生だったはずだったが体が大きくて、龍介は美山は大学生だとずっと思っていた。 「コイツは骨があるよ」 そう親父が言っていた。 美山は、うちに入らなければ何れかは酷いチンピラになるだろうとみなに思われていた。だから、うちに入るのは、大変いい選択だった。 その美山が最近、親父に言われているのは…… 『大学生が変に政治的な事に興味を持っている。龍介をそんな馬鹿な集団に流されないようにしてくれ』 『うちの組織は…そんな集団の上の存在だから。そんな、素人集団に巻き込ませないように』 ・・そういう事だった。 美山は先ほどまで龍介といっしょにいた光紀が去っていく方を見ながら言う。 「龍介さんあれは、アイツはなんなんですか?」 「あれは、俺が尤も大事にしている存在だよ」 「……それは」 「恋人だ」 きっぱりと言い放つ龍介に美山は驚く。 「……恋人って。彼は男ですよ?女性じゃないじゃないですか?そんな事。親父には言えませんよ」 「大丈夫。性癖には口を出さないと、昔、言われたから」 "……それは。そういう意味じゃないと思います…" 口ごもる美山だった。 美山は自分が見知ってる龍介は、女にモテて、女好きで。 だから、親父は性癖には口を出さないって言ったんだろうと。 そう思って言葉に詰まっていた。 「美山、この世界には割と居るよ。長くいればわかる、いいか、女はな、力を持ってる者やお金を持ってるとわかるとな、態度がかわるんだよ。そういうのに辟易してるヤツが大勢いるってことだ」 美山は龍介を仰ぎ見る。 「でも、光紀は。そんなんじゃなくても。大事だけどな」 龍介はそう言ってにっこりと笑う。 ……… …

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