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番外編 愛しくて可愛くてちょっと天然

俺の恋人……あれ、兄弟?いや、マブダチ……とにかく、あれだ、俺の家族の奏川翡翠は可愛い。 切れ長っていうんだっけ、キリッとした目が可愛い。 激しい運動ができないせいで平均より華奢な体型も、白い肌も可愛い。 人見知りなところも可愛い。 料理上手なところも最高。 言い始めたらキリがねぇんだけど、とにかく世界一可愛い。 そんな翡翠と再会して、もう二度と離れたくねぇって言ったら、ルームシェアしてくれることになって、愛してるって言ったら、すげぇ顔真っ赤にして僕もって言ってくれて。 そんな宇宙一可愛い翡翠が、いつもは一人で本を読みふけってる夕食後の遅い時間にリビングにやってきて、何も言わずとも俺の隣にちょこんと座ってくれただけで、もう俺のテンションはマックス。 翡翠ぃ!って抱きついても、苦しいって不満は言うけど拒否られねぇ。となれば、もうやることは一つだろ。 飽きるほど……いや、飽きることはないんだけどキスをして、それでも否定の声は上がんないから俺の部屋に連れ込んで、今度はもっと深いキス。 切れ長の瞳がトロンとしてきて、色白の顔が真っ赤に染まって、その口元から甘ったるい声が、舌っ足らずに俺を呼んでくれる。 「…ぁ、……ひよ、ぉ、」 ああっ、もう優勝!最高! 宇宙……の上ってなんだ?とにかくこの世で一番可愛い! 首筋に吸い付いて俺のだって痕を残す。 ひとつじゃ足りなくて、肩に鎖骨に、あと手術の痕の上からも。 その度に翡翠の口から小さな甘い声が漏れて、背筋がゾクッと震えた。 好きなやつに触れて最っ高なはずなのに、触れれば触れるほど喉がカラカラになってく。足りねぇ、もっとって、気持ちが爆発しそうになって、俺はベッドの下に手を伸ばした。 すぐ使えるようにって色々まとめて押し込んでる箱を手繰り寄せて、目的のものを…… 「あ、やべ。」 中に入ってたボトルを手に取って、それが空っぽだったことに気づいちまった。 そうだよ、三日前にそれはもう盛り上がってボトルも俺の中身もスッカラカンにしちまったんだ。 どうすっかなと頭を抱える俺に、翡翠がトロンとした可愛い顔を傾ける。 「……どしたの?」 「あー、いや、ローション切らしててさ。」 何やってんだよ俺。 可愛い翡翠を傷つけるなんて絶対あっちゃならない。そのまま続行、なんてありえるはずがない。 かと言って今からドラッグストアに行こうにも、俺の息子はもう臨戦態勢だ。だとすれば何か代わりになるもの、か? 「は、ハンドクリームとか……駄目なんだっけ?」 「ん、無害とは言えない、かな。」 俺より数百倍は賢い翡翠がそう言うんだから却下だ。 うわ、どうする。正直俺の息子はもう痛いくらい元気なんですけど。 頭を抱える俺を翡翠は瞳をトロンとさせたまま見上げる。 「……あの、僕作ろうか?」 「は?」 突然の事すぎて思わず変な声出た。 つくる……作る? 「え、つ、つ作れるもんなの?」 「要するに粘性があって、人体に無害なものならいいんだよね?」 あ。そうか、そうだよ、俺の翡翠は薬学部の学生様だった。 ふ、と熱っぽい息を吐きながら身を起こした翡翠は、その綺麗な指で自分の顎をなぞりながら、ん、と考えにふける。 俺は、なんかもう色っぽすぎて押し倒しなおしたい衝動を必死に抑えながら、何となくベッドの上で正座した。 え、あれか、よく分かんねぇ薬品をこう、混ぜたりとかする、感じ?白衣の翡翠はぜってぇエロ…じゃねぇや、なんかすげぇ薬とか作っちゃうのか? でも、翡翠の口から出てきたのは意外な言葉だった。 「……片栗粉。」 「は?」 かたくりこ……って、あの? 「あ、あれか?唐揚げ揚げる時に使う、あの片栗粉??」 思わず確認したら、翡翠はうん、と頷いた。 「片栗粉をお湯で溶けばとろみがつくし、人体にも問題ないから。」 熱っぽい吐息と一緒に出てきた言葉に、俺の背筋はゾゾッと震えた。 いやいやいや。 ちょっと待て。 どうしたのって首を傾げる翡翠は可愛い。この世で…とにかく、一番可愛い。 でもその可愛い口から出てきた単語で、俺は俺のギンギンな息子が片栗粉つけられてサクッと揚げられちまうのを想像しちまった! いつも料理するその可愛すぎるエプロン姿を見てるから!翡翠の料理は世界一美味いから!!ボウルに入った水溶き片栗粉を菜箸でかき混ぜる姿余裕で想像できちまうって!! 大事な一人息子……いや、双子の玉ちゃんを入れると三人兄弟なのか?と、とにかく想像しちまったとたんに、元気だったはずの息子はすっかり意気消沈しちまった。 翡翠はそれにも気づかず、脱がせて床にばら撒かれてた服をかき集め始める。 「作ってくるからちょっと待って…」 「いや、いやいやいや!」 無理無理無理。俺の脳内もう完全にエロじゃなくてグロな想像でいっぱいだから。 素肌にパジャマを羽織りながらキッチンへと向かおうとしていた翡翠の手を、俺は必死で掴んで止めた。 「そ、そこまで無理してすることじゃねぇだろ。ほ、ほら、翡翠の身体が一番大事だから。な、だから、今日はやめとこう?な?」 ここで止めなきゃとにかくヤバい! 翡翠の身体と俺の息子を守るため、俺は未だかつてないくらい頭を働かせて訴えた。 あくまでも、翡翠の身体の為だと強調して。 それでも、翡翠は頷いてくれなかった。 「……僕のレポートがあるからって、ここ数日我慢してたくせに。」 翡翠は唇を小さく尖らせた。 拗ねてる。やばい、可愛すぎる。抱きしめたい!……けど、それやると俺の息子が唐揚げに! いや、翡翠はそんなことしねぇけど、想像だけで縮み上がるんだよ!どことは言わねぇけど! 「今日の続きはまた明日すればいいだろ?明日もあるし明後日もあるしさ!な?」 とにかく説得あるのみだ。必死に言葉を重ねて、大丈夫だからって俺がニカッと笑ってみせると、やがて翡翠はふっと眉間の皺を解いた。 「……ヒヨの言う通りだね。ごめん、焦っちゃった」 ぽつりと呟いて、恥ずかしそうに俺の胸元に顔を埋めてくる。ふわっとした髪が肌に触れてこそばゆい。 「……ねぇ、ヒヨ」 「ん?」 耳元で翡翠のくぐもった声が聞こえる。鼓動がまた少し早くなる。 「じゃあ……今日はこのまま一緒に寝てくれる?」 「あったりまえだろ!」 俺は嬉々として布団をめくりあげる。翡翠はこくんと頷いて、俺の腕の中にすっぽりと収まるように潜り込んできた。華奢な体を抱き寄せると、ちょうど俺の腕の中にピタリとはまる。 窓から差し込む月明かりだけがぼんやりと室内を照らしていた。 翡翠の額にそっとキスを落とす。 「おやすみ、翡翠」 「……おやすみ、ヒヨ」 微かな寝息がすぐに聞こえてくる。安心しきった顔ですやすやと眠る恋人の顔を眺めながら、俺も幸せな気持ちで目を閉じた。 ……乗り切った、と内心ガッツポーズしながら。 「――って、ことがこないだあってさ。」 「……お前の中には、恥じらいと言う言葉はないのか?」 「あ?なんだそれ。」 単純作業に飽きたのか、突然始まった息子の明け透けな近況報告に、思わず作業の手を止め頭をおさえた。 毎年実家で行っている梅酒作りを、今年は家でも。 以前、温人と話をしてから約一ヶ月。あの時は想像もしていなかった形で約束が果たされようとしていた。 綺麗に洗われザルに上げられた梅の実を手に取り、ヘタに竹串を刺しては取り除きボウルへと移す。 初めは難儀したが、慣れてしまえば楽しいものだ。自分はどうやらこういう作業は性に合っているらしい。 買い物に行った温人と翡翠君が氷砂糖を持ち帰るまでには何とか全てのヘタを取り除いておこうと、気がつけば黙々と没頭してしまっていた。 が、どうやら息子は単純作業は苦手らしい。 集中していたのは初めの数分だけで、次第に飽きてきたらしく「最近そっちはどうよ?」と世間話を始めてしまった。 それでも手元が疎かになっている訳ではないので、こちらも当たり障りのない会話をしていたつもりだったのだが…… 「いやぁ、誤魔化すの苦労したぜ。温人さんはまぁ、誰がどう見ても天然だけど、実は翡翠も負けてねぇよな。」 「……、」 なんとも返答に困る話だ。 こんなにも赤裸々に話していいものなのだろうか。 いや、自分達は親子なのだからそういった性の話も別に隠す必要はないのだろうが、翡翠君がこの事実を知れば、おそらくは激怒して正座でのお説教になるだろうに……。 息子はそこまで深く考えていないのだろうな。 まぁなんにせよ、十数年探し求めていた最愛の人との生活は幸せそうで何よりだ。 「で、そっちはどうよ?あの温人さんとホントに上手くやれてんのか?」 突然に話を振られて作業の手が再び止まる。 上手く、とは先程までの緋葉の話からして、つまりはそういうことなのだろうが…… 「ふむ、そうだな……」 はて、何をどこまで話したものかと思案したのも一瞬。 そういえば。 こちらも似たようなことがあったなと、数日前の出来事を思い起こしていた。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 続きます。 私、基本的に本編の間に挟む閑話は一人のキャラに限定せず、いろんな人物の視点いれてたんですよ。 ところが今回の「隣人を愛せよ。」は全て緋丹視点。 その理由が……この話でお分かりいただけたかとꉂ🤣𐤔 ちなみに、温人視点でも翡翠可愛いしか言わないです。

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