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血塗られた約束 12

アルと戯れ、遊んでもらい、俺の膝に顎を乗せリラックスしているアルの毛を撫でいたら、(ようや)くセオの瞼が開いた。 「気分はどうだ、セオ」 「あのっ……あ、えっと……」 アランの薬がよく効いたのか、苦しそうな様子はないけれど。俺の問い掛けに答えようとセオは一度口を開き、そしてもごもごと呟きながらブランケットに潜ってしまう。 「も、申し訳ございません、ユシィ様……あっ、あのような、はしなたい姿を晒してしまって……えっと、オレ……ッ!?」 「セオ、謝る必要はない。如何わしく、淫らな行為は初めてだったのだろう?」 セオからブランケットを奪い取り、顔を覗き込んで俺がそう尋ねると。セオは顔を真っ赤にし、俺から視線を逸らして唇を噛む。 「ユ、シィ……さま、見ない……でっ」 快楽を知り、羞恥を知ったその表情は、俺の欲を煽る。ブランケットをキュッと握り締めているセオの両手を取り、ソレをベッドに縫い付けた俺は揺れる瞳に酔い知れつつ声を出した。 「……アル、アランを呼んでこい」 《仰せのままに、ユシィ様》 「え?」 まるで、俺の命令に返事をしたアルの声を聴いたかのように、セオは正気に戻り、目をぱちくりさせているのだが。 「おや、恥ずかしさは薄れたのか?俺に迫られている分際で、随分と余裕そうだな」 「そんな、つもりはっ…ん、ッ」 (あるじ)の真下で俺以外に気を取られたセオの唇を塞ぎ、再度その意識が淫靡(いんび)に溺れるよう(いざな)ってしまう。 「ぁ…ん、っ」 しかしながら、吸血行動は取らぬよう……自らアルに声を掛け、わざわざ煩い使用人を呼び出したのだから良しとしてほしいところだ。愉しい遊戯は、アランが此処に辿り着くまでの僅かな時間のみなのだから。 「ん、ハァ…っ、ぅ」 けれど。 セオの鼻に抜けていく微かな鳴き声が心地良く、勝手に笑みが洩れてしまう。軽く触れるだけの口付けでも、セオは眉を寄せて実に愛らしい反応を魅せていて。 「はぁ、ユ…しぃ、んぁっ」 滴る唾液すら甘く花のように香るセオの舌をやんわり絡み取ってやると、セオの声に艶が増した。 「らっ…め、ふ…ぅ、ンッ」 「セオ」 名を呼んでやり、押さえ付けていた両手をなぞりつつ、ゆっくりと指先を重ねていく。抗おうと思えばいくらでもできるだろうに、くたんと力が抜けてしまうセオ。 媚薬の毒は、アランの解毒薬で消されているはずなのだが……ナカの疼きまでは消し去れていないのなら、この乱れ方も納得できる。 ただ、もしこれがセオの素の感度だとしたら、セオは人間の中でもかなり(もろ)い生き物だと思った。 「ユシィ、さま…っ」 ……それにしても、美味い(しずく)だ。 この反応に、この味。 一度知ったらもう、後には戻れない。 そろそろ現れるであろうアランの気配を感じ、俺は触れ合っていた唇を名残り惜しく離し笑う。潤んだ瞳を視界に入れつつ、小さなセオを抱き締めて。 「セオ、お前は俺のモノだ」 そう呟いた俺の言葉に、セオはこくりと頷いたけれど。 「……そんなこと知ってるわよ、バカユシィッ!!どこに病み上がりの男の子取っ捕まえて、盛ってる公爵様がいるわけっ!?」 「何処にって、此処にいんだろ」 「開き直るんじゃないわよっ!!」

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