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血塗られた約束 19

「……永遠にその姿でいてくれたら、何でも言うこと聞いてあげるのに。それにしても、相変わらず可愛いわね」 「うっせぇー、クソ執事。なんで俺がテメェを見上げなきゃなんねぇーだよ、セオも俺よりデカいとか最悪」 「こら、セオちゃんに悪態吐かないの。今の貴方は12歳の男の子なんだから、小さくて当然でしょう?」 アラン様の提案を受け入れたオレは、少年……のようなユシィ様と、手を繋いでいる。 「……この姿で、日中の日差しに晒されながら眠気に耐えて、しかも教会内で神に祈って生活しろと?どれだけ魔力使わせる気でいんだよ、アホじゃねぇーの」 「夜は元の姿に戻っていいし、減った魔力はセオちゃんからのキスで補充できるんだから、貴方にとっても悪い条件じゃないはずよ?」 頬を膨らませて、ムスッとしているユシィ様が可愛い。人間の子供に変身できるなんて信じられないけど、どうやらその謎は永きに渡り解明されていないらしく、強い魔力を持つユシィ様のみが操ることのできる姿なんだとかで。 ただ、子供の姿だと普段の姿より魔力の消費が激しいらしく、その上、オレたちと同じ生活を強いられるとなると、ブラッディチェリーのみじゃ回復できないからと。 吸血はしないことを条件に、オレはユシィ様の魔力回復に協力することを了承した。正直、ヴァイパイアの事情はよく分からないことだらけで、理解しようと頭を捻っても未知数なことが多いから。 オレは、アラン様に言われるがままの言動を取るように心掛けるつもりだけれど。 「とりあえず、状況を整理するわね。ユシィはセオちゃんを連れて今から町へ戻り、朝日が昇り切る前に二人で教会内に入ること」 リヒカ様とルーグス様に嘘をつくことは、やっぱり心苦しいと思った。でも、これはオレが自分の意志で決めたことだから。 ユシィ様と離れたくないと、自我を通したオレに付き合ってくださるヴァイパイアのお二方のためにも。オレは、自分の気持ちを大事に、オレらしく生きていきたいんだ。 「セオちゃんは体調が良くなって早朝に教会の周りを散歩してたら、孤児のユシィに懐かれた……的な呈で話せば、どうにかなるわ。司祭様が慈悲深いお方なら、孤児を見捨てないはずだから」 「アランの企みは理解できた……が、俺にとっては苦行だ。セオ、俺は闇の住人だが、今後のためにも昼間は大人しくしてやる」 オレより少しだけ小さいユシィ様が、オレの手を離して笑う。ヴァイパイアの牙はユシィ様が幼くなったせいか、八重歯くらいの小ささに収まっていて、それがなんとも愛らしいのに。 ふわりと漆黒の煙に巻かれ、元の姿に戻ったユシィ様はオレの腰を抱いた。 「あ、あのっ……」 さっきまで可愛らしい男の子だったはずのユシィ様に、突然抱き寄せられても頭が追いつかない。けれど、オレのそんな都合は関係なく、ユシィ様はオレの顎にそっと指を添えていく。 「セオ」 必然的に交わる視線を逸らすことができないオレは、自分の名を呼ばれることに何故だか悦びを感じて。 「……夜は、覚悟しておけ」 「っ、ん…」 奪われた唇は、驚くほどに熱く感じた。

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