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血塗られた約束 25
とりあえずは、第一関門クリアといったところだろうか。聖女と神父の承諾を受け、セオに同行する生活がこれから幕を開けるのだが。
暖炉がある部屋とはまた別の個室に案内された俺は、セオに言われるがまま、されるがままで。普段の俺なら眠っている時間帯にカソックに着替え、セオと揃いの装いになった俺はある疑問をセオに投げかける。
「なぁ、カソックって修道士しか着れねぇー
服じゃないのか?」
「んー、たぶんそうだと思うんですけど……オレもまだ見習いの身で、ちゃんとした修道士ではないですし。でもでも、ルーグス様のお古のカソックがいくつかあるので、オレはいつもそれで過ごしておりますよ?」
「ふーん……って、は?セオ、お前歳いくつだ?」
教会に住み込み、修道服のカソックを着込んでいるセオは修道士なのかと思っていたけれど。なんとなく話が噛み合わない感じがし、俺はセオに問い掛けた。
修道士にしてはかなり幼いヤツだと思ってはいたが、まさかコイツ。
「えっと、16です」
……赤ん坊じゃねぇーか、おい。
いや、俺がアホみたいに生き過ぎているだけなのだろうが。それにしても、こんなガキに興味を唆られる日が来るなんて……この世は本当に、何が起こるか分からない。
「プラウ君は教会のこと、良く知っているのですね。オレ、まだ16歳だから修道士にはなれないんです。まぁ……たぶん、もう一生なることはないんでしょうけれど」
「どっかの性悪野郎に、魂を売ったからか?」
俺が皮肉混じりにそう言うと、セオは少しだけ申し訳なさそうな顔をし、そしてこくりと頷いた。
「はい……修道士は、清貧 ・貞潔 ・服従 の三つの誓いを掲げて生活をするのです。でも、オレはその誓いを神ではない方に捧げましたから……おそらく、協会が定めた修道会に入会することすら叶いません」
伏せられた睫毛が僅かに震え、セオの気持ちの切なさだけが滲み出る。
「人は、生まれながにして何らかの罪を背負っているのだそうです。自分の醜さや罪の重さをより深く見定めるために、神の救いを求める……オレはずっとそうやって、生きていくものだと思っていましたから」
「……その生活を壊したのは、俺だな」
考えるよりも先に、声が言葉を紡いでいた。
吸血鬼に情けをかけたばかりに、自分の信念を揺るがせたセオに感じるこの思いは、罪の意識なのだろうか。
「確かに、そうかもしれません……でも、ユシィ様に全てを捧げる決断をしたのはオレです。それに、ユシィ様をプラウ君としてこの場に留めているのも、オレが我を通した結果なのです」
「祈ることは、修道士じゃなくてもできんだろ。俺ですら、こうして教会で祈れてんだから……セオのその姿、俺は嫌いじゃない」
修道服を纏い、清貧を保とうとするセオはキレイだ。幼さとのギャップに、心を奪われそうになるけれど。
「照れてしまいますので、そんなに愛らしいお顔で見つめないでください。それより、あの……コレを腰布に通してお着替え完了なのですが、大丈夫そうですか?」
セオはそう言いつつ、色付いた頬を隠すように俺に背を向けて。小さなチェストから大事そうにある物を取り出し、そうして……ソレを恐る恐る、俺の前に差し出したのだ。
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