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血塗られた約束 34

ユシィ様がアラン様に与えた処罰、それはクリスマスの式典への参加強制だった。この教会で町人たちと共に、礼拝を体験しろと……それが罰になり得るのか、オレには分からないけれど。 アラン様はユシィ様に従い、(しゅ)の降誕を祝う典礼に集うことをお約束されていた。 そして、オレへの罰はと云うと。 「ァ、ん…やめっ」 アラン様がお(やしき)へと戻られた後、オレはユシィ様から処罰として、淫靡(いんび)(いざな)いに溺れている。 「やめたら罰になんねぇーだろうが……それに、ココはすげぇー良さそうだ」 アラン様がスリーパー用にと、オレとユシィ様に用意してくれたブラックのコットンガウン。前開きのボタンがプチプチと外されていき、オレだけが素肌を晒していて。 真紅のロザリオのように、赤く色付き始めた胸の突起をやんわりとユシィ様の唇に挟まれ、オレは思わず身を捩る。 でも。 「あまり動くと大切な宝物が壊れてしまうぞ、セオ」 オレに忠告するユシィ様は、意地の悪い顔をして笑う。けれど、それもそのはず……オレの両手首には今、ユシィ様が使用している薔薇のロザリオが巻かれているから。 元々はオレのロザリオなのに、とても神聖な物なのに。オレの動きを封じるため、手首に絡まったロザリオはベッドのパイプへと繋がっており、無理矢理解くことは困難で。 「薔薇の花冠に繋がれ、じっくりと悪に侵される気分は如何なものだ?」 ロザリオの意味合いをしっかりと理解しているにも関わらず、ユシィ様はあっさりと聖母様を侮辱する。 「おやめっ、ください…ユシィ、さまッ…こんな、用途で…ん、アっ」 「こんな用途、とは?わたしたちを誘惑に陥らせず、悪からお救いください……だろ。セオにとって俺が悪だと思うなら祈ればいい、何も間違っていないだろう?」 「そんなっ、ユシィ様…(いと)わしいことを、仰らない…でっ」 祈りの言葉も、そのアイテムも。 ユシィ様が悪戯にオレを弄ぶための道具に過ぎなくて、オレは羞恥で泣き出しそうなのに。 「セオはすぐに両手で顔を覆ってしまうからな、その愛らしい表情を今宵はたっぷり堪能させてもらうとしようか」 いつもなら。 優しくオレの頭を撫でて、甘く微笑み、オレに手解きをしてくださるユシィ様なのだけれど。今日のユシィ様は冷たい眼差しで、オレを見つめ北叟笑(ほくそえ)む。 「んぁッ、ン…っ、ア」 毎晩のキスと、それに準ずる様々な行為はユシィ様の魔力を保つためにオレが了承していること……と、云うよりも。抗えずに流された結果、ユシィ様の好きなように弄ばれて、それに身体が反応するようになってしまって。 「はっ、ぅ…ン、ん」 我慢したくても息をするたび漏れ出る声、淫らに歪む表情、ユシィ様を感じ取ろうと貪欲な身体、その全てをオレは隠すことができないままなのに。 「セオは恥ずかしいことが好きなようだな、いつもより感度がいい」 オレは今夜もユシィ様に、はしたない姿を晒してしまうんだと思うと……欲に溺れ、快楽に染まることを頭が拒んでしまう。 それに。 オレはついさっき、ユシィ様が好きだって自認したばかりだから。 「ユシィ、さまぁ…やだッ、ァ…」 縛られた両手でユシィ様に抱き着くことも叶わなくて、オレは切ない気持ちを堪えるためにぎゅっと眉を寄せていた。

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