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血塗られた約束 38

朝のお祈りを済ませ、俺はセオと共に、聖女モドキのリヒカとインチキ神父のルーグスがいる部屋へと向かった。 まずは、この生活に俺とセオが慣れること。 そして、リヒカとルーグスに疑われることなく俺が二人からの信用を得ること。 その二つがクリアできない限り、俺がこの教会の闇に触れることは不可能で。問題を外堀から埋めている最中の俺は、リヒカとルーグスの謎に踏み込めないままでいるのだが。 聖女と神父を信じきっているセオは、今日も清々しい笑顔で朝の挨拶を交わしていく。 夜中はあんなに乱れて泣いていたのに、俺に縋って甘い声を上げていたのに。カソックの下に淫らな身体を隠しつつ、それでも清廉であろうとするセオの姿に頬が緩んでしまうけれど。 「……はよ。リヒカ、ルーグス」 いつまでもセオだけを視界に入れているわけにもいかず、俺もセオのように二人と挨拶を交わして。 「プラウ、おはよう。丁度いいところに二人とも来てくれた。今日はミサの後、セオとプラウにお願いしたいことがあるのだよ」 朝食の用意をし終わり、席に着いたルーグスが俺とセオにそう言った。そんなルーグスの言葉に頷き、リヒカがその後に続く。 「クリスマス当日、子供たちに振る舞うクッキーがあるでしょう?その材料の買い出しをね、今年はセオとプラウで行ってきてほしいと考えているの」 「毎年、リヒカ様と一緒に買い出しへ行っているお店で良いのですか?」 「ええ、隣街のいつもお世話になっているお店でお買い物してきてくれるかしら?」 俺にはさっぱり分からない会話を繰り広げる三人の声を聞き、俺はセオを見るけれど。 「プラウもセオと共に、隣街の賑やかな雰囲気を見てくるといい。この町人の多くは、隣街に出ている民がほとんどだからな」 俺にも重要な話なんだと言いたげに、ルーグスは俺とセオに視線を向け微笑んだ。 「クリスマスって、クッキー食うのか?」 人間にとってのクリスマスがどんなものなのか、単純に思ったことを訊いた俺に、いち早く応えてくれたのはルーグスで。 「本来は、(しゅ)の誕生を祝うことが目的で、クリスマスはとても神聖なもの。アドベントの今は特に節制に努める期間だが、子供たちにとってそれだけでは面白くないだろう?」 「だから教会では、クリスマスクッキーをプレゼントしているんです。色んな金型でくり抜いて作るクッキーは、楽しくて美味しい贈り物なのですよ」 ふわりと笑い、そう言ったセオだが。 話の内容から察するに、材料調達だけでなく、どうやらこの教会ではクッキーを焼く作業も別日にあるらしい。 買い物前からもう既に楽しさで溢れているセオを見ると、少々先が思いやれる気がしなくもないけれど。 「プラウ、セオのこと頼んだからね。セオは隣街に赴くと目移りばかりで本来の目的を忘れてしまうから……プラウがしっかり、セオの手綱を引いてあげて」 リヒカのその一言で、俺の中の不安は確信に姿を変えた。 「分かった……けど、そんなに心配ならリヒカが行けばいいんじゃねぇーの?」 「可愛い子には、旅をさせるものなのだ。セオがちゃんとおつかいできるように、プラウは見守り係としてセオのサポートをしてやってくれ」 ……すっげぇー過保護だな、コイツら。

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