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血塗られた約束 44
少しだけ、騒つく感情を胸の中に押し込んで。
4回目の聖日、日曜日を迎え、紫色の蝋に火が灯ったアドベントリースをオレはぼんやり見つめていた。
1本目、希望を表す紫色のキャンドルに火が灯った時は、こんな気持ちになるなんて考えてもみなかった。
2本目、平和を表す紫色のキャンドルが輝いた時は、プラウ君が爆睡していてオレ一人が慌てていた。
3本目、喜びを表すピンク色のキャンドルのように、蝋に火が灯る瞬間をこの時初めてプラウ君と共有できた。
そして、今灯った火が4本目。
愛を表す紫色のキャンドル、その火が小さく揺れていく。
紫は、節制の色。
アドベント本来の意味を忘れずに過ごせるように、色使いにも意識を向けると見えないものが見えてくる。
3回目のみ、紫で表現していた節制や悔い改める心の意味を和らげ、喜びの日が近づいていることを示すために薔薇色のキャンドルに火が灯る。
先週のピンク色から、また紫色へと変化したキャンドル。喜びを感じた心を落ち着かせ、主 が誕生したことを祝う日がもうすぐやってくるけれど。
希望を抱き、平和なことに喜びを感じて。
愛を現し生きることを、オレたちは神から与えられた。
だから。
オレはずっと、慎ましく生きていくものだと勝手に思い込んでいたのかもしれない。
最後の5本目、主 の誕生を意味する白いキャンドルに火が灯るとき、オレは一体、何を思うのだろう。
……当たり前だった生活が、このアドベントで一変した。
ユシィ様と出逢って、揺れ動く心を知った。
町を愛する気持ちとは違う、ユシィ様だけに向けられる特別な感情。リヒカ様やルーグス様に対する、恩や感謝とは異なる想い。アドベントキャンドルに火が灯るたび、少しずつ自覚していく愛おしい存在。
オレの隣で真っ直ぐにキャンドルの灯しを見つめているプラウ君は、どのような心持ちでいるんだろうか。姿は違えど、ユシィ様には変わりないその心を感じたい。
生活を共にして分かったユシィ様の心遣いに、助けられているのはオレの方だから。魔力回復のための行為に一向に慣れないオレを、ユシィ様はいつだって優しく抱き締めてくれる。
両手をロザリオで拘束されたことが一度だけあったけれど、あの時だって結局……ユシィ様はオレの願いを聞き入れてくださり、ロザリオが外された後は甘い瞳に酔いしれてしまって。
夜行性のユシィ様は、オレより絶対睡眠が足りていないはずなのに。自分のことよりオレの睡眠時間や体調を気に掛けてくださるし、プラウ君として毎日のお祈りも欠かさない。
買い出しの時は、励ましの言葉で勇気づけてくださった。空に浮かびながら眺める星空はとても綺麗で、ユシィ様の温かさを素直に感じられた夜だった。
ブラッディチェリーの成長も、毎朝必ずオレと一緒にチェックしてくださるし、リヒカ様とルーグス様、ミサに来る町人とも楽しげに会話なさっている。
リヒカ様が仰っていたように、ユシィ様はかなりの頑張り屋さんで努力家だ。日々の積み重ねがどれだけ重要なものなのかをしっかりと理解して、周りの人たちからの信用を勝ち取っている。
……ユシィ様は、ヴァンパイアなのに。
その事実を知る者は、この町でオレしかいないんだ。
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