5 / 7
第5話
シェリムアップには夜の22時に到着した。陽向はバスに乗っている間、適当に買い込んだカンボジアの酒を飲んだ。日本の濁酒のような白く濁った酒で、アルコール度数が高い。そんな酒を浴びるように飲んでいる姿は、まるで素面になるのを恐れるかのようだと、もう一人の自分がそんな自分を俯瞰して見ていた。途中、何度もうとうとしてしまいながらも、目覚めるたびに酒を飲んだ。
素面になれば、常識とか、世間体とか、そんな周りの目を気にした弱気な思考に捕らわれてしまうだろう。だからと言って、酒の力を借りるなど、決して良いことではないことくらい十分理解している。でも、どうすることもできない悲しさと後悔が自分に襲ってきて、陽向はシェムリアップに着くまで、理性的な行動が全くできていないでいた。
バスから下りると、陽向はすぐタクシーを捕まえ、あの夜の記憶を頼りに、運転手に行き先を告げた。あの時、迅は確かに自分に言った。自分の住むマンションの目と鼻の先にアンコール国立博物館があると。たまに暇潰しに、歩いて散歩がてら行くことがあると。
取りあえず博物館に向かいさえすれば、そこから迅の家に辿り着くことができるはずだ。陽向はその希望に必死に縋った。
タクシーの運転手は、観光客がこの時間に博物館に行こうとしていることを不思議がっていた。何かを語りたいような目をしていたが、陽向は酔っ払った笑顔でそれを軽く無視した。
昨日から何度もタクシーを使ってしまい、予定していた予算を大きく上回っている。トゥクトゥクは前以て予約が必要だし、バスを使うには、初めてカンボジアに訪れた人間にはハードルが高い。でも平気だ。お金など関係ない。というか今の陽向は、そんな損得を冷静に考えられる状況では最早ない。
タクシーが博物館の入口に止まった。陽向は料金を素早く払いタクシーを降りると、博物館の入口付近の景色をぐるっと見渡した。その時、見覚えのある色が自分の目の端に入った。それはピンク色の外観をした建物だった。初めて迅の家に行った時、そのマンションの外観の色が強く印象に残っていたからよく覚えている。
陽向は、その建物めがけて、スーツケースを押しながら必死に走った。走りながら、自分の足がおぼつかないことに気づいた。まっすぐ走っているつもりでも、酔っ払っているせいでふらふらと左右に揺れている。それでも必死にピンク色のマンションまで走った。途中、外灯が薄暗いせいで恐怖を感じたが、それよりも、迅に早く会いたいという感情の方が大きく上回った。
迅のマンションまで来ると、陽向は重たいスーツケースを持ちながら五階まで一気に階段を駆け上った。普段運動などしない陽向は息が苦しくて胸の真ん中が痛くなる。これでもし家に迅がいなかったら滑稽すぎると陽向は思ったが、そうである可能性など微塵も考えたくなかった。
覚えていた部屋番号まで廊下を歩くと、陽向は迅の部屋の前で止まり、荒い呼吸を整えながら、震える指でチャイムを押した 数秒待っても、部屋の中からは何の反応もなかった。陽向は信じがたい状況に頭が真っ白になった。気を失いそうなほどの悲しみの重力が自分に追いかぶさるように、陽向はドアに背を向けると、ドアに凭れながらずるずると床に座り込んだ。
(嘘だ……。)
心の中でそう叫びながら、陽向は自分の膝に顔を突っ伏した。ひどい絶望感に、陽向の心はぐちゃぐちゃに潰れてしまいそうになる。
陽向は自分の膝を力込めて抱きしめると、石のように動けなくなった。酔っぱらっているのもあるが、迅がいないショックのあまり、完全な思考停止状態に陥ってしまう。自分が今からどうすべきか、全く頭が働かない。
どのくらいの時間こうしていただろう。自分の五感が麻痺したような状態の中、陽向はかすかに、誰かが階段を上って来るような足音を聞いた。その足音は徐々に大きくなり、陽向のすぐ近くで止まった。頭を上げて確認したくても、石のように固まった体はうまく動いてくれない。
「陽向さん……ここで何してるの?」
その時、驚きと戸惑いが混じった低い声が陽向の頭上で響いた。陽向はゆっくりと頭を上げると、そこには、自分が心から会いたくてたまらなかった迅がいた。迅は仕事帰りなのか白いシャツに紺色のズボンを履いていた。ビジネスマン風な格好をした迅は、陽向の目にとても魅力的に映り、陽向は迅に会えたことに、歓びで全身が震え始める。
「迅君……良かった。やっと会えた……」
陽向は迅を見上げると、呂律の回らない口調でそう言った。
陽向の見下ろす迅の顔は、今まで見た、どんな迅の表情にもないものだった。表現しづらい思いを秘めたその顔は、陽向を不安にさせるには十分だったが、それ以上に迅に会えた嬉しさで、陽向のその不安はすぐにかき消された。もう既に、陽向は自分の気持ちしか考えていない。いきなり自分の家に来られる迅の迷惑など考えていないし、迅が自分のことをどう思っているかも考えていない。ただただ、迅に会いたいという気持ちだけでここまで来てしまった。それも、情けないことに酒の力を存分に借りてだ。
「まさかと思うけど、陽向さん、酔ってるの?」
迅は陽向の目の前にしゃがみこむと、陽向に視線を合わせながらそう問いかけた。
「い、いや、少しだけ、飲んでるけど・・・・・・あ、あのさ、僕はただ……迅君に、会いたくて来たんだ……」
「どうして俺に会いたかったの?」
迅は更に陽向に顔を近づけると、陽向の目を真っ直ぐ見つめながらそう言った。
「わ、分からない……ただ、凄く会いたくて、会わないと、苦しくて……」
迅は、陽向の目の前で大きく溜息を吐くと、『立って』と言い、陽向の両腕を掴んで持ち上げた。迅は陽向の腕を自分の肩に回して支えながら、器用にドアの鍵を開けると、自分の部屋に陽向と共に入る。
迅は玄関の電気を付けると、奥の部屋はひっそりとあの時のままの雰囲気を残していた。たった二日前だが、ひどくこの部屋を遠くに感じるのは、迅に会えなかった時間が途方もなく長く感じたからだ。
陽向は酒のせいではっきりとしない頭のまま靴を脱ぐと、迅に支えられながら部屋の中に入った。
「陽向さん……分からないなんて言うけど、本当は分かってんでしょ? 俺の家に来たのって、こういう意味でいいんだよね?」
迅は少し怒ったような態度でそう言うと、陽向の両肩を掴み、そのまま廊下の壁に陽向を強く押し付けた。陽向を見つめる迅の目は鋭く、怒りを内包しているように見える。自分が迅を怒らせる理由は、ここに来た理由を明確にしないことだろう。しかも、酒に酔っているという陽向の狡さが、更に迅の神経を逆撫でている。
「迅君……」
陽向はぼんやりとしてしまう頭に力を入れながら、迅の目を必死に見つめた。目を逸らしたら迅を傷つけてしまうと思いながら、思いを込めて見つめる。
「会いたかった。凄く……明日日本に帰るってなったら、居ても立っても居られなかったんだ……」
迅は探るように陽向を見つめると、陽向の肩を痛いくらい掴んだ。
「い、痛いよ、迅君……」
陽向が、顔をしかめながら迅の顔を見上げたその時、自分の唇に何か温かいものが触れた。それが迅の唇だと気づいた時、陽向は大きく目を見張りながら、迅の胸を両手で強く押し戻した。
「じ、迅君・・・・・・」
「何も言わないで。陽向さん」
迅はそう言うと、陽向の手首を素早く掴み持ち上げ自由を奪った。壁に貼り付けのようにされた陽向は、体を揺らして抵抗を試みるが、迅の力は想像通り強く、無駄な抵抗だった。
迅はそんな陽向を無言で見つめると、もう一度陽向の唇を奪った。迅は素早く陽向の口腔に舌を差し入れると、それを陽向の舌とゆっくりと絡め始める。その舌は、まるで別の生き物のようにいやらしく陽向の口腔内を動き回る。陽向は、迅のその舌先から与えられる快感に思わず我を忘れ、自分からも舌を絡めながら、迅のキスを強く求める。
さっきの軽く触れたキスとの差に、陽向は軽くパニックになった。もちろん同性とキスをするのはこれが初めてだし、自分だって過去に何度も異性とキスをしてきた。でもそれは、子どもの遊びのようなキスだったと思い知らされる。こんなキスは初めてだ。興奮で震えが止まらない。
「ふっ、んんっ」
「全然足りない」
迅はそう言うと、角度を変えながら更に深いキスを陽向に与えた。そのせいで迅の舌は、陽向の喉にまで届きそうなほど深まり、えづいてしまいそうな不安を与える。その激しいキスはまるで、どうすればもっと自分の欲情を陽向に伝えられるかを探っているかのようで、それは陽向も同じで、自分も、こみ上がる欲情を迅にそのまま口移しするかのように、必死で迅のキスに応戦する。
迅とキスをしていると、自分が同性愛者だという事実を、これでもかと突き付けられる。迅を性的に強く欲するこの欲望は、自分の中に潜んでいた本当の自分から生まれたものだと、もう陽向はそう観念するしかないのだろうか……。
「こっち来て」
自分の唇を、陽向の唇から名残惜しそうに離すと迅は言った。迅は陽向の手を引くと、躊躇いなく寝室の方に足を向けた。そんな迅の後姿を見つめながら、陽向は一瞬で悦びと不安という、相反する感情に埋め尽くされる。
陽向はここまで酒の力を借りて来てしまった。心も体も何の準備もないまま、ただ純粋に迅に会いたいという思いだけで来てしまった。それでも、今から自分たちが行う行為を想像していなかったかと言うと嘘になる。でも、今、激しく鬩ぎ合っている不安と期待のせいで、陽向は棒のようにぎこちなくなり、寝室の入り口手前で立ち止まる。
「どうしたの? 怖いの?」
迅に核心を突かれ、陽向はゆっくりと唾を飲み込んだ。
「じ、迅君……そ、その、僕はまだ、準備ができてなくて」
陽向は下を向きながら、絞り出すようにそう言った。
「準備? それって心の方? 体の方? もしかして、酒の勢いで来ちゃったから、今頃後悔してるとか?」
迅は前を向いたまま冷ややかな口調でそう言った。陽向は迅の態度に、迅を傷つけてしまったと感じ余計体を強張らせた。
迅は黙ったまま動かない陽向から手を離すと、自分だけ寝室に入り、ベッドへ勢いを付けて座った。ベッドから陽向の返事を待つ迅の視線は、陽向の心を探るように鋭かった。でも、それだけではなく、欲情を露わに曝け出した危険な目をしていて、その目に陽向は、不安よりも期待と悦びの方が大きく心を占めていく。
「……そうだよ。僕はどうやら、迅君に抱かれたいらしい……」
本当に自分から発せられた言葉かと耳を疑う。でも、迅の瞳に催眠をかけられているみたいに、言葉が自然と漏れ出てしまった。
「なるほどね……俺はタチだから大歓迎だよ」
「でも、初めてで……どうすればいいか、不安で……」
「大丈夫……俺が優しくしてあげる。陽向さん……バスルームに行こうか」
迅は落ち着いた声でそう言うと、陽向に近づき、陽向の腕を掴みバスルームまで引っ張った。
✳︎
お互い全裸になり、バスルームで無我夢中でキスをした。キスの激しさはさっきの玄関でした以上で、既に唇が腫れているかもしれない。
キスをしながらシャワーを浴び、迅は陽向の秘部を指で慣らしながら、受け入れる準備を整える。迅はとても手慣れていて、陽向に余計な恐怖心を与えないように、ローションを使いながら、陽向のそこを時間をかけてほぐしていく。自分の秘部が迅の指の動きに慣れてくると、違和感しかなかった秘部の中の感覚が、徐々に敏感になっていくのが分かる。いやらしくなっていく自分の体に戸惑いを覚えるが、自分が想像していたよりも、後ろの感度は悪くないらしい。陽向はバスルームの壁に両手を付き、尻を突き出すような隠微な格好をしながら、迅にされるがまま、挿入された指の動きに神経を集中する。時折いやらしく動く迅の指に、陽向は漏れなく反応し、腰をくねらせる。その度毎に、迅に『陽向さん、めっちゃエロい』と耳元で囁かれる。
「え、エロいって言うなよ……恥ずかしい」
陽向は手を付きながら後ろを振り返りそう言った。本当に顔から火が出るほど恥ずかしいのに、迅はご機嫌な顔をして陽向を見つめる。
「出会った時から思ってたよ。この人絶対エロいセックスするって」
「そ、そんなこと思ってたの? やめてくれよ……って、あっ、ああんっ」
迅は陽向の言葉を遮るように、挿入している指で陽向の内壁を絶妙に擦る。
「陽向さんは? 俺の第一印象はどうだった?」
「い、今ここで、それ聞く?」
陽向は背を弓なりの逸らしながら、迅からの愛撫に耐える。自分でも驚くほどのポテンシャルで、性的な感度を上げていく自分に戸惑う。
「じ、迅君は……ライフセーバーみたいに精悍で爽やかで……とても男性的だと思ったよ」
「ふーん。じゃあ、俺は陽向さんのタイプだってこと?」
「え? タイプ?……ちょっ、うあっ、そ、そこっ、だめっ」
迅は陽向に質問をしながら、陽向の秘部を愛撫する手を止めず、今度は、空いている方の手で、陽向の胸の突起を巧みに弾いてくる。
「言ってよ。タイプだって。言わないと、焦らすよ?」
「はあっ、やだ、んんっ、やめっ、それっ……」
「ほら、早く……」
迅は陽向の耳元に、湿度のある声でそう言った。
「タイプだよ! めちゃくちゃタイプだ!」
陽向は快感に体を震わせながらそう叫んだ。
「……そう。良かった。俺もだよ。陽向さん……」
ぞくっとするような艶のある声で、迅は陽向の耳元にそう囁く。
迅の言葉に陽向は心から歓喜する。お互いに惹かれ合っていた事実に泣きたいくらい感動する。自分がアンコールワットに興味を持ち、旅行をすると決めた時に感じたあの不思議な感覚が、まさかここに繋がるとは誰が想像しただろう。その奇跡に、自分がゲイとして生きていく勇気が、心にじわりと湧いてくるのを感じる。
ただ、少し不安なことがある。自分は今、酔いが冷め殆ど素面な状態だ。でも迅はそんな自分を、酒の勢いに任せてここまで来ただけと疑っているかもしれない。現にそれは事実だ。一度は逃げたが、迅に会いたいという思いを抑えられず、それでもまだ怖くて、その恐怖を消し去るために酒を飲んだことは否めない。でも、今は違うと、迅にここで正直に伝えなければ。
「好きだよ……迅君。僕はもう……酔ってない」
陽向は、自分の耳元にいる迅の顔を見つめながらそう言った。迅は目を大きく丸くすると、陽向を食い入るように見つめた。
「俺も……出会った時から好きだったよ……だから今、めちゃくちゃ恥ずかしいけど、夢みたいだ……」
迅は陽向から目を逸らすと、恥ずかしさを紛らわすように、両手を器用に使いながら、陽向の秘部と胸の突起を同時に愛撫する。
「ああっ、じ、迅君! 僕も、おな……じっ、だよ、ふんうっ」
「かわいい……陽向さん。俺がめちゃくちゃにしてあげるよ」
迅はうっとりとした表情で陽向を見つめると、体を起こし、一旦陽向の秘部から指を抜いた。迅は陽向の後ろで膝をつくと、陽向の足を広げさせ、さらに尻を突き出させると、露わになった陽向の秘部に舌を這わせる。
「ううっ、ちょっ、迅君、何を!」
迅の舌が自分のそこを這い回っている。陽向はその現実に理解が追い付かずパニックになる。
「ああっ、ダメ、うっ、やっあ……」
「気持ちいい? もっと感じてよ、乱れる陽向さんが見たい……」
迅はそう言ってローションを自分の手に垂らすと、その手を陽向の中心に持っていき、ゆっくりと扱き始める。
「ううっ、迅君! ダメ!」
後ろと中心を同時に責められ、陽向は、自分の体に稲妻が走ったように背中をぴんと反らせた。迅の舌は熱く濡れていて、陽向の秘部をいやらしい湿度でねっとりと這い回る。迅の指は、陽向の中心の先端を抉るように親指でいじりながら、その大きな手で陽向の中心を力強く覆うように、絶妙なリズムで扱き上げる。
「あ、ああっ、やあっ、はあっ、うっ、んっ……」
陽向は、迅から与えられる愉悦が、自分が想像していた以上に素晴らしいものであることに驚愕する。自分が男に抱かれながら我を忘れるほど興奮し、まるで生まれ変わったように、自分の性感帯が嬉々と躍動していることに、改めて本当の自分を思い知る。
「そろそろいいかな……」
迅は熱のこもった声でそう言うと、体を起こし、背後から陽向の腰を両手で掴んだ。
「いくよ、陽向さん……」
迅はそう言うと、自分の中心を陽向の秘部にそっと押し当てた。その感触に、陽向は期待と不安でぞわりと体が泡立つ。
「怖いよ、迅君……」
「大丈夫。俺を信じて……」
迅の声は優しく、陽向の不安は少しだけ和らぐ。
「うあっっ、くううっ」
その時、目の前に火花が散るほどの衝撃が陽向の体を劈いた。陽向はその衝撃に、両手を握りこぶしにして耐えるが、想像以上の圧迫感に、呼吸の仕方を忘れそうになる。
「陽向さん、力抜いて、ゆっくり呼吸するんだよ」
迅は陽向の頭を優しく撫でながら、自分の中心をゆっくりと抜き差しする。
「どう? 痛い? だいぶ解したから、大丈夫だと思いたいけど……」
迅は陽向の顎を掴み、自分の方に陽向の顔を向けさせると、不安げな瞳で覗き込む。
「だ、大丈夫……、初めてで、驚いただけ、って……んんっ、ちょ、あああっ」
迅は陽向の返事を最後まで聞かずに、自分の中心を、更に深く激しく抜き差しする。
「やば、俺、迅さんの顔見てセックスするの、理性ぶっ飛んじゃいそうで避けてたのに、今、見ちゃったから、俺の理性壊れた……」
「迅君?」
陽向は迅の言葉に頭が追い付かずにいると、迅はいきなり、陽向をライフセーバーのように抱え上げ、無言でバスルームを出ようとする。
「え? え? 迅君?」
驚いている陽向を迅は無視すると、そのまま寝室に向かい、陽向をベッドに勢いを付けて放り投げた。
「うわっ!」
「陽向さん、陽向さん……好きだよ!」
迅は仰向けに倒れた陽向に覆いかぶさると、陽向の腰を持ち上げ、正常位の体制で、陽向の秘部にもう一度、自分のいきり立つ中心をゆっくりと挿入させた。迅の中心は、自分のものよりも立派で美しく、それが自分の中に居るのかと思うと、陽向は、興奮でどうにかなりそうになる。
「うあっ、迅、君っ……いきなり、そんな、はあっ、ああっ」
迅の中心が陽向の内壁を擦りながら動いた。迅の中心は、陽向の敏感な部分を巧みに刺激してくる。そのせいで陽向は、自分の中にある時限爆弾のようなものにスイッチが入ったような気がした。もしそれが爆発したら自分はどうなってしまうのか。陽向の中でその疑問が、期待とともに膨れ上がる。
「あっ、あっ……ふうっ、んんっ」
喘ぐ陽向を、迅は魅せられたように見つめると、陽向の肩を強く掴みながら律動を速めた。
「ああっ……いいっ……いいよっ、陽向さん!」
迅はそう叫ぶように言うと、陶酔した瞳を揺らしながら、巧みに腰を使い、陽向の内壁をかき回す。
陽向は、今晩のことを一生忘れないという気持ちを込めながら、自分の上にいる迅の姿を、必死に目に焼き付けるように見つめた。迅もそれに応えるように陽向を真っ直ぐ見下ろす。二人の視線が絡み合う度に、精神的な結びつきと、性的な快感が、絶妙に混ざり合う形で増幅していくのが分かる。
「ああっ、迅、く、んっ……ど、どうしよっ、な、何か、くるっ」
陽向は空を掴むように手を伸ばしながらそう叫んだ。迅は陽向の手を取ると指を交互に絡ませるようにしっかりと握った。触れ合うお互いの指は、汗でしっとりと濡れている。
「陽向さん……いくよ!」
迅はまるで陽向に合図でも送るようにそう言うと、陽向の手を痛いくらい強く握った。
「今連れてってあげる……」
(どこへ?……)
そう問いかける間もなく、迅は美しく鍛えられた腹筋を使いながら、絶妙な腰使いで、自分の中心を陽向の中で容赦なく暴れさせる。陽向は迅の中心から、強い圧力と摩擦を感じながら、何かが自分に向かって近づいていることに気づく。
(あ、来る!。)
そう感じた時、自分の中の時限爆弾が、ついにカウントダウンを刻み始めたことに気づいた。
「陽向さんっ、陽向さんっっ……イクっ」
迅は陽向の名を呼びながら、腰の動きを最高潮に極めた。その律動が陽向のカウントダウンを更に早める。
「はああっ、じ、迅く、んっ、僕もっ、イ、イクうっ」
陽向は迅の手を強く握り返すと、果てしない快感に、自分の意識がゆっくりと薄れていくのを感じた……。
ともだちにシェアしよう!