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色事R18
床で絡み合う二人は、お互いにもう頭がうまく機能していなかった。
グウェンは覆い被さったオリバーの重みを下半身に感じ、甘い声を上げる。
「あっ…」
ゴリ、と質量を持ったものが触れる。
逃げようともがくが、オリバーも逃がそうとはせず押さえつける。意図せずそこを擦り付け合うようにしてしまう。
「あぁっ……」
「グウェン……ッ」
オリバーの低い声が耳元でささやく。
ゾクリと震えて、グウェンは短く息を吐いた。必死に抵抗するが、オリバーの鍛え抜かれた体格に敵わない。一見細身に見える彼だが、日々の稽古で身体を作っていた。
グウェンは優しい王子像と現実のギャップにショックを受けながら、目の前の男にされるがままになった。
オリバーはカチャカチャとベルトを外し、直接グウェンのそれに擦り付けた。
甘い顔に似合わず大きくそり立ったものが何度も敏感な所を行き来する。
グウェンは酷く官能的な情動を覚えた。
「ぁっ……、あ、」
「くっ……、」
押し付けるものの、下着のせいで中まで入れない。
「邪魔だっ……、」
「っあ!」
乱暴にグウェンの服を引きちぎる。
周囲に薄汚れたガーゼ質の布が散らばった。
小鬼特有の苔色の皮膚があらわになると、オリバーの瞳は揺れた。突如、正常な意識が少し戻ってきたのだ。
しかし興奮は収まらない。
裸になったグウェンの腰を掴むオリバーの手は小刻みに震えている。躊躇しているようだ。
「あぁっ……、すまない、グウェン……!俺は何てことをしているんだっ……」
「王子…………、」
謝罪を繰り返しながらも止まらない。
グウェンは鋭く伸びた爪を地面に立てる。
オリバーは矢継ぎ早に話した。
「制御が効かないんだ……、"ヒート"が始まってしまった……っ、」
「ヒート……!?」
(何……一体何でこんなことに……。ヒートって、発情期……?王子様は人間の、はずなのにっ)
色ごとに縁のなかったグウェンは、強い刺激に耐えるのに必死だ。目の前の王子の赤い瞳
を見つめる。
「俺は天使の血が混じっているから……っ、生殖本能が天使族のように、強力なんだ……っ」
「あ、」
本で読んだことがある。天使族にとって、交尾とは崇高で聖なる行為であり、その強力な繁殖力によって天使は全種族の覇権を手に入れたと。
そしてその血を継ぐ王族の者は、青年期になると発情期が発現する。
子種を残そうと身体に熱を籠めるのだ。
「すまない、今、薬を……!」
正気を保とうと、舌を千切る勢いで噛んで、やっとのことでグウェンから離れる。
「はぁっ……」
「うっ……、」
勢いよく離れた昂りが擦れグウェンに刺激が走る。
オリバーは激しく辺りを見回した。
しかしヒートを抑える薬はどこにもない。
「あ、そうだっ……、クソッ!」
オリバーは、薬を城に置いてきたのだ。
天使と婚姻を結ぶ今夜の王子の業務には、"夜枷"も組み込まれていた。
『シュワルダの未来を担う子どもを作るために今夜は励めよォ、王子様』
今朝、からかうようにダレンに肩を組まれたことを思い出す。
そう。シュワルダにとって、天使との直属の子どもは国宝そのもの。王子と天使の強く気高い血から生まれる子は、宗教的にも政治的にも強い影響力を持つ。
重大任務を背負うオリバー王子は今夜の情事を成功させるために1ヶ月間自慰行為を自粛していた。もちろん、こんな大事な日にヒート抑制剤を服用するなんてもってのほか。
「…………」
グウェンは横たわったまま、露出した肌に冷たい空気が触れるのを感じている。熱で頬を上気させ呼吸を乱す、あられもないその姿を見ていると、オリバーの中心は更に硬くなっていった。相手がゴブリンということは理解しているというのに、発情は収まらない。
このままだと、ゴブリンに王族の子種を注ぐことになってしまう。グウェンはオスだが、ゴブリンは性別関係なしに子を成すことが出来てしまう。孕ませれば大問題だ。
グウェンはおぼつかない頭でオリバーの方を向いた。先程までの柔和な王子からは想像もつかない、獣のような瞳と目が合う。
「……王子……、」
ギラギラとこちらを睨む瞳は明らかに欲情を孕んでいる。
他人から性的な目を向けられたことが無いグウェンは、羞恥からとっさに身体を手で隠した。しかし見る者に情事を思い起こさせるかのように、隠した部分からはとめどなく体液が溢れてやまない。緩く腰をよじらせる動きは色めかしく、結んだ口からは涎が垂れ、瞳は切なげに潤んでいる。
王子はゴグリと喉を鳴らした。
普段微塵も色を見せず目立たない、ともすれば性欲すら無さそうなグウェンの痴態はオリバーの欲情を煽るだけだった。
「グウェン……!」
「あ、うわっ…ッ」
グウェンに覆い被さったオリバーはクチュ、と穴に先端をあてがった。何度か行き来したあと、とうとう滑って侵入してしまう。
その夜、塔から声が止むことはなかった。
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