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第15話 蓮

   主任と二人で同じベッド。  え、何を意識してるんだろう?  目の前で鍋がぐつぐつと音を立てている、良い匂いがする。飲むか?と差し出してくれた日本酒も美味しい。  「さらさらしてて飲みやすいですね。いくらでもいけそうです。」  主任は俺の言葉に少し意味のある笑い方で答える。  「酔っ払いはもうごめんだぞ、飲みやすいからって飲みすぎるなよ」  仕事の時には見せない笑顔でこちらを見ている。  気道が狭くなったように呼吸が苦しい、急に速くなる心音が聞こえてしまうのではないかと焦る。ごまかすためについ言葉数が多くなってしまう。それに合わせて酒量も多くなってしまっていた。あれ、やばいかも?と思っていたらいきなり腰にきた。  立ち上がったと同時に床にぺたんと尻餅をついてしまった。少しぼうっとする意識の中で前に彼女に言われたセリフのがこだまする。  「蓮ってさあ、酔っ払うと絡んできてちょっと面倒なのよね。すぐに暑いって服脱ぎたがるし」  そうだ面倒だからと、台所の床に捨て置かれたことがあったな。主任もリビングの床に俺の事を捨てておくのかなあ?アルコール漬けの頭で考えてたら眠たくなってきた。  今日、一日中緊張していたから仕方ないのかもしれない。  もうここで寝てしまおう。そうすれば、そうすれば……。  「おい、上原!お前今日もまた俺に面倒かけるのか?」  ああ、主任が何か言ってる。返事しなきゃいけない、けれど今日はもう無理。  目をゆっくりと閉じたら、体がふわりと浮き上がった。どうやら酔うと俺は空も飛べるらしい。  何だか良い香りがする、何だろうこれ?  木蓮の花に似ている。

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