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第16話 匠
飲み過ぎるなと言ったのに。
床に膝を折って座り込むその姿勢はどう見ても子供のよう。何でこいつは酔うとこうなんだ。
しまった、レンタル布団を手配していない。という事はまたベッドをこいつと分けるのか。今朝目覚めた時に上原の腰に回っていた自分の手を思い出す。気をつけないとまた抱きしめてしまいそうだ。そうとう人肌不足だな。
上原もジーンズにシャツじゃ寝るのも苦しいだろう。しかしこれを脱がせるのは、さすがにはばかられる。
一晩くらい仕方ない。若いし大丈夫だろう。
ベッドに放り込むとリビングに戻る。シャワーを浴びて寝る支度をして寝室に戻ると掛け布団から白い足が伸びてる。いつの間にか服を脱ぎ去った上原は下着一枚で寝てる。よかった昨日のシャツ脱がせたのは俺じゃない。
「肌白いな」
自分で自分の発した言葉に驚く、俺も飲み過ぎだかもしれない。ダブルベッドってこんなにも狭かったのか。
なるべく触れないように離れて横になる。今日は良く眠れそうだ何だか心地よい疲れがある。
すっと引き込まれるように眠った。
そして夜中に体が熱くなって目が覚めた。首筋にかかる息、背骨に沿ってゾクゾクと走る感覚。上原が顔を俺の首筋にうずめるようにして眠っている。熱い息が首筋から俺の全身を犯す。
……まずい。
身体が反応している、離れようとしたその時に上原の足が腰に絡んで来た。ぶるっと身体が震える。
もう無理だ。
「無意識だろうと、誘ったのはお前だからな」
そう眠っている上原に告げる、幸せそうな無邪気な寝顔。滑らかな上原の肌に手を滑らせた。
「ふっ」と小さく上原が息を吐いた。
気持ちが良いのか上原が強くしがみついてきた。頭の中では「セクハラ」「パワハラ」と言う単語がぐるぐる回っている。明らかにこの状況は常軌を逸している。
それでも、もうここからは引き返せない。
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