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第17話 蓮
気持ち良い。ああ、木蓮の香りに包まれる。
下腹部に伸びてきた手の動きに合わせて自分の呼吸が荒くなる。
久々に感じた高揚感に包まれる。手の動きがまるで体の隅々まで知り尽くしているように高みへと導いてくれる、そしてあっけなく絶頂を迎えた。
暖かい手に触れられて、もっと人肌が恋しくなり必死にすがった。唇に触れた柔らかい首筋に吸い付いて、しっかりと痕を残した。
木蓮の香りに包まれて安心して眠る。
そんな夢を見た。
目が覚めたら一人で主任のベッドに寝ていた。主任のベッドでものすごい夢見たんじゃないだろうか、変な寝言を口走ってないと良いけれど。
ベッドの下に落ちている服に、またやてしまったのか反省する。飲むと暑くなって服着てるのが嫌になる。
あれ、眼鏡が無い?
よく見えなと、ベッド周りをごそごそと探す。ここまで来るのに眼鏡無しでは無理なはず。
「す、すみません。あの、眼鏡が見当たらないのですが、どこに有るのかご存知ですか?」
「ああ、これ」
当たり前のように主任が渡してくれたけれど、どこにあったんだろう。と言うより、俺どうやってベッドまで歩いたんだろう?
「主任、昨日はすみませんでした。何かご迷惑またかけたりしてませんか?」
主任は全く答えてくれない。聞こえないのか無言で台所へコーヒーを淹れに行った。やっぱり何かやらかしたんだ。でも一体何を?記憶のない夜の事、思い出すこともできない。
「あの、す、すみませんでした。クリーニングとって来たらすぐに出ますから!」
「ああ」
答えてはくれたけれど、主任は目を合わせてくれないような気がする、勘違いなのかな。そう考えていたら、主任がコトンとお皿をテーブルに置いた。
「飯食え」
そう言い残して、自分はさっさとソファーへ移動してしまった。
どうしたんだろう、なぜだか居たたまれない気持ちだ。
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