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第18話 匠

 朝から気まずい。合意せずに行為に至った。  こんな事初めてのことだ。久々にベッドに人の温もりがあったとはいえ、自分らしく無いと思う。更に相手は会社の後輩だ。  どう対処して良いのか困る。 ただ肌を滑る手が心地よかった。そのまま止まらなくなってしまった。  「昨日の夜事なんだけど、何か覚えてる?」  上原に声をかけると、トーストを口いっぱいに頬張ってキョトンとした目でこっちを見る。少し考えて、困ったような顔をして返答する。 「主任、やっぱり何か迷惑をかけたのでしょうか。ベッドにどうやって歩いて行ったのかもわからなくて」  情けない声で返事してくる。もしかして何も覚えてないのか?なかった事にして蓋をすれば終わりなのか。そう思うと、嬉しいような残念なような不思議な気持ちになった。  その日、二晩世話をした仔犬は元気に出て行った、せっかく拾って懐いてきた頃に手放さなくてはならない、そんな気分だ。  一人に戻った日曜の夜、急に広くなったベッドに違和感を覚えた。このベッドが、こんなに広くて冷たかったんだと知った。

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