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第41話 蓮
飛行機での出張、ある程度の距離があれば、当然新幹線より飛行機になる。
飛行機か、昔は何の抵抗もなく乗れた。そう、大学の卒業旅行までは。あの旅行がトラウマになった。帰りの飛行機が乱気流に巻き込まれて、緊急着陸した。無事についたのだから何もなかったと言う事なのだろうけれど、あれ以来なんともなかった飛行機が正直怖い。そして、あの旅行依頼、一度も乗る機会がなかった。
総務から電子チケットも転送されてきた。これで出張準備は完璧なはず。飛行機に乗るという事実が待っている以外は何の不安もない。初めての出張、それも主任と一緒。みっともないところは見せたくない。
緊張しながら木曜の朝早くに空港へ向かう。主任が窓際で俺は通路側だった、二人並んで座るといつもと違う距離。
心拍数が必要以上に速い。飛行機に乗っているという事実からなのか、それとも主任が腕が触れるほど近くに座っているからなのか。
主任との距離に緊張してるとしたら、俺は主任の事を意識しているということなのか。
違うはず、それは駄目だ。主任には恋人がいる。でも、恋人かどうかは、まだ解らないとも考えてしまう、もしかしたらと。
何を考えてるんだろう、勘違いしてはいけない。今のこの緊張は飛行機に乗っている事実から来たもの。そう、それだけ。
飛行機は雲ひとつない空に飲み込まれるように飛び立った。大丈夫、きっと揺れない。そう思っていた。
突然のアナウンスに胃がキリキリと痛む。
「当機は気流の乱れたところを飛行しております。大きく揺れましても飛行には何の問題もございませんのでご安心ください」
揺れる?こんなに晴れているのに。この前は悪天候だった、だから仕方ないと思ったけれど。
アナウンスを聞いただけで、気持ちが悪くなってきた。吐きそうだ。
体に力が入ってぎゅっと肘掛けを握りしめた。
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