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第43話 蓮
一日があっという間に終わった。接待まで終ると、もう足元もおぼつかない。ホテルにようやくチェックイン出来るとほっとした。これで無事一日が終わるはずだった。
「申し訳ございませんが、お客様のご予約はございませんが」
笑顔のホテルマンに冷たく言われた。
「そんなはずはありません。もういちど調べてください」
必死に訴えかけても返ってくる答えはひとつ。
「確かに田上様のご予約は承っておりますが、上原様というお名前はございません」
主任は一瞬考えて、俺の方に向き直った。
「上原、お前総務にホテルの手配は頼んだんだよな?」
「え、いえ。出張の手配で主任と同じフライトでと」
「そうか、しまったな。俺の指示不足だ」
「え?どういう意味でしょうか」
「いや、客先が宿泊先を抑えてくれる事もあるから、総務ではチケットと言われたらそれだけしか手配しないよ。すまない、上原。確認すべきだったな」
飛行機の行きと帰りの日付が違えば、普通そこにはホテルもセットでついてくるはずだと思っていた。主任のせいじゃない、自分の確認不足だ。
「部屋、どこか空いていませんか?」
疲れてもうくじけそうな気持ちを抑えて聞く。
「あいにく本日は当ホテルは満室となっております」
「この辺りで、他にどこか探していただけませんか?」
もう必死だ。一晩どこで過ごせばいいんだ。
「お客様、大変申し上げ難いのですが。ドームでのコンサートの関係で本日この辺りのホテルはどこも満室でございます」
俺は、今晩宿無しだ、絶体絶命なのかもしれない。
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