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第45話 蓮

   アルコールが疲れた身体に回ってきた。だんだんと浮き上がるような気持になる。  主任はいつも俺の困った時に、何故かそこにいてくれる。子度の頃に見た戦隊物のヒーローみたいだと思う。  安い缶酎ハイを飲んでいてもかっこよく見える。飲むと、喉仏が上下する。なんだが色っぽい。  「主任はいつもいい匂いがしますよね。木蓮の花みたいな。祖母の家に大きな木蓮の木があって、その香りがとても好きなんです」  そう主任に伝えた時、思い出したくないことを思い出してしまった。あの時、主任のマンションには主任と同じ香りがする人がいた。思い出したくもないのにと、ヤケになって一気に手に持っていた缶をあおってしまった。  「おい、上原!お前はどういう酒の飲み方をするんだ、いつもこうなのか?」  そんなわけない、主任といるとおかしくなる。  「あの人って主任の何なのですか?」聞きたい、けれど……聞けない。  「取り込み中だから帰れ」って、その言葉が意味することはなんだったのだろう。考えれば考えるほど悲しくなってきてしまう。  「主任……もしかして、紺野さんって。あの人は主任の恋人なのですか?」  考えが言葉になった、聞くつもりはなかった。けれど心から溢れ出した言葉がお酒の勢いを借りて口をついて出てしまった。  主任が驚いた顔をして俺を見た、そこには一瞬の沈黙があった。 そして次の瞬間、俺は何故か主任の腕の中にいた。

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