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第47話 蓮

 ああ、気持ちが良い。何だろうこの感覚、前にもあったような気がする。ふわふわとしか気分の中で何かがザワザワと肌を上がって来る。  まるで俺の一番いい場所を知ってるかのような的確な動きに踊らされる。木蓮の香りに包まれて、吐息が漏れる。  「上原、皺になるから腰上げろ」  誰かが俺の名前を呼んでる?  腰を持ち上げられるとズボンを一気に取り上げられた、いつの間にか俺は下着姿になっていた。  冷やりとした空気に肌が晒され目が覚めた。  「ええっ!」   主任の顔が目の前にある。  「主任?すみません、俺、また何かやらかしましたか」  焦りながら問うと、主任が優しく微笑んで髪に触れた、この感じは初めてじゃない。そして嫌でもない。  「いや、俺が何かしてるところだけど」  そう言われ体の稜線をつと指で撫でられた。  「うんっ」  変な声が出る。それより俺は何故、下着姿なんだろう。  「あの?あのっ、し、主任っ」  「静かに、煩いよ。少し黙っていて」  主任は囁くようにそう言うと、熱のこもった瞳でまっすぐに見てくる。そして、近かった顔は完全に俺の顔と重なった。  なぜか、俺はこの感覚を知っている。主任の唇は柔らかい、かすかな花の香りに包まれながら体の力が抜けていく。  気持ちが良い、手がいつの間にか主任の首にまわる。  「酒飲んで覚えてませんは、今日はもう無しだからな」  え……今日は?  今日はって事は、前にもこんな事があったのだろうか。  「何も嫌がる事はしないから、力抜いてて」  そう言われてかえって体に力が入る。  何よりこの状況が飲み込めていない。俺は主任に憧れてて、それで、そして?体を触られて嫌ではない、と言うより興奮しているってどういう事だろう。  主任の手は綺麗だ。俺の手より一回り以上大きい、そして指が長くてって少し骨ばっている。けれど、触り方が無骨じゃない。  触れられて、反応している自分がいる。何か変な声が出てしまいそう、どうしよう。  「紺野は昔、俺のパートナーだったよ。去年あいつが出て行くまではね。今、俺の興味は目の前にいる仔犬だけだけれど。これがお前の聞きたかった事だよな?」  見つめられると顔が火照る、初めて人を好きになった時のように緊張している。そして、主任はやっぱり紺野さんと付き合っていたと知った。  ん?ところで目の前の仔犬って……俺のことなのかな。

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