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第49話 蓮
主任に「抱きたい」と言われた。
女性とのやり方は分かる。そんなに経験は多くないけど、それなりに普通なはず。恋人がいなかったわけではない。
けれども、俺の辞書に「抱かれる」という項目はなかった。
主任が実は女性なのかとか、変なことを考えて今しまう。言われている事が理解出来ていない。
困惑していると、主任の手が髪に触れる、もうそれだけで何でもいいという気分になる。主任が服を脱ぎ捨てた、自分の呼吸が心音に合わせて速くなってきたのが解る。
主任の手が下着にかかる。つまり、これは……。
下着まで剥ぎ取られ産まれたままの姿になる。体に纏うものがなくなってしまう。酔いも覚めてきて何だか心もとない。
「主任、あの。俺は、どうすればいいのかが……」
主任が笑い出した。
「お前は、黙ってじっとしてろ、いい子だから」
優しく口付けられて、自然と緊張が解ける。こうやって主任に口づけられるのが好きだ。ゆらゆらと波に揺られて甘い刺激に酔っていると、首筋、そして鎖骨へとその口づけが移動する。耳をかすめる時に「好きだよ」と聞こえた気がして、下の方から熱が上がってきた。
心臓に近い方の胸に小さな痕ができるように口づけられた、始めての感覚に頭がついていかない。
主任の右手はするすると身体を撫るように、下へ下へとと滑って行き一番敏感なところへとたどり着く。
柔らかく愛撫されて、しっかりと勃ち上がった先に音を立てて口付けされた。
「っ、あぁっ」
驚いた声が出て、主任にすがりつきたい気持ちになった。
「蓮、お前も触ってくれる?」
始めて名前で呼ばれて、なぜが心臓が早鐘のように打ち始めた。主任の手の動きの強い快感に溺れて声が漏れる。俺の手の中で主任自身もしっかりと質量を増している。感じてくれていると思うとお腹の奥の方がなぜか疼きだす。
「し、主任っ、も……無理です。手、離してください」
「いいよ、このままで」
その言葉が耳に届いた時に、俺はあえなく果てた。
主任は俺の吐き出したものを手で受け止め、そのまま自分自身に擦り込むように手を動かした。主任が小さく息をのむ。俺は主任の欲を受け止め、そしてなぜか幸せな気持ちになって眠りの淵に落ちていった。
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