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第63話 蓮
月曜日の朝、会社に着くと山中さんがにこにこと話しかけてきた。
「おはよう、上原君。金曜日は楽しかったよね」
そう言われて「そうだね」と仕方なく返す。立ち話しをしている時、ちょうど主任が入って来て横を通り過ぎた。
頭を軽く叩くのが、通りすがりにやるのが主任の日課。何故か緊張して身体に少し力が入る。
けれど主任はまるで俺なんか見えなかったかのように、何もせず横をすっと通り過ぎて行った。「えっ?」と、驚いた声が出てしまう。
「何?どうかしたの?」
山中さんが反応する。
「いや。えっと、忘れ物したと思って」
山中さんに変な言い訳をすると自分のデスクに向かう。
「主任おはようございます」
いつもより少しだけ小さい声になってしまう。俺なんかやった?主任の気に触るような事?不安でいっぱいになる。
「お、上原か、おはよう」
いつもと変わらない笑顔にホッとする。きっとさっきは気がつかなかったんだと安心する。主任の一挙一動にこんなに振り回されるなんて情けない。メールの確認をして、今日の予定を確認する。
主任はいつもと変わらないような、それでいてなぜか距離があるような。雰囲気が違うなと思ってついちらちらと見てしまう。
何度目か主任の方を見た時に目が合った、ドキッとして慌てて下を向いた。
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